彩の物語

□はじまりの風は紅く
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春の木漏れ日を受けながら貴陽(紫州、もしくは王都)へ真っ直ぐ歩いて行く男がいた。

その男は禁色の紅を纏っていた。それも真紅。

男の立ち止まり、先に見える都を見つめた。


『ようやく着いたか、貴陽』


はっと息を吐いた。


『待っていろーーーー・・・』


少し都を眺めた後、もう一度足を進めた。愛しいーーーに会うために。













それから少しあと・・・

霄太師から「陛下の仮の嫁になって下されえええええ」と依頼され、承諾した秀麗は大急ぎで賃仕事へ向かおうとしていた。

次は賃仕事へ行こう!というところで、霄太師の使いの者に呼び出され、家人の静蘭に代わりに行ってもらったのだ。


「もう!急いでいかなきゃ」

ぐにゃ

「え?」


秀麗が門を出たところで、何か柔らかいものを踏んだ。足を上げて、視線を下にすると人が。


「ぎゃっ!・・・え、ひと?

あ、あのー?ごめんなさい、大丈夫ですか?」

『うぅ・・大丈夫・・・ただの栄養失調だから・・・』

「いやいやいやいや!」

秀麗は大慌てで倒れている男を家の中へ引きずって行った。









ことっ
男は茶器を置いた。引きずられた後、まず椅子に座らされ、半刻もしないうちに目の前には一人分では無い量の料理が置かれた。
必死に男が消費していたのは記憶に新しい。


『ありがとうお嬢さん。実を言うと、目の前が真っ暗になりかけてたんだよ』

「そ、そうだったんですか・・・」

ぽやん、と幾分か危険な事を言っているはずの男に毒気を抜けれ、秀麗は脱力した。

もう一口、お茶を飲んだ。


『私は修羅というものだが、ここらへんに紅 邵可という人はいるだろうか?』

「え?あの、父に御用ですか?」

『あぁ、彼のお嬢さんだったか。なに、少し邵可に用があってね』

修羅は懐かしむように微笑んだ。
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