いつも、貴方の側に…

□6章
1ページ/1ページ

……暇すぎる



何もすることなく(させてもらえず)気付けばかなりの月日が経っていた。



十次郎は東軍の動きを探るため城の外で見張りを続けている。




一人きりで何かしようったって限られている。




「……なんか、刺激が欲しいかも」


壁に寄りかかりながら呟く。



そんなことを思っていると、突如襖が開かれた。




「……姫」




入ってきたのは三成様だ。



「今、少し時間あるか?」




私が黙って頷くと、静かに障子を閉め、私に近づき……





ドンッ!





いきなりもたれかかっていた壁に手を打ち付けた。



普段見せない真剣な眼差しに身体が強張る。





「しばらく前のことになるが、あの日の夜、信長様と何をしていた?」



「あ……え、えっと」





記憶を巻き戻す。


あの晩、信長様に部屋に無理矢理連れて行かれた日のことを思い出した。




「何度信長様に聞いても曖昧に流されるばかり。
別に姫を怖がらせたいわけではない。

正直に話してはくれないか?」





……しばらく考える。


信長様があの話をしたがらない意味もわかる。

しかし、ここで本当のことを言わなければこの場が修羅場となる可能性も否定できない。





「えっと、ですね」


おずおずと言葉を紡ぐ。




「あの日、私が黙って部屋を出たのは本当です。」



三成様の眉間にシワがよる。


「……なぜそのようなことをした?」




「あの日、私の部屋に向かって一筋の光が射し込んだ気がしたんです。
でも、一瞬で消えちゃって……

それが何だったのか気になってしまって、申し訳ありません。」




全くのデタラメだが、とにかく頭を下げる。


だが……




「……やはりか」




「えっ?」


予期せぬ返答に戸惑いを見せる。




「俺のところにもその光は届いてた。

気になって姫の部屋にいったらあのざまだ。
そりゃ、何かあったのではないかと心配になるだろう」



本当に心配しているのか、三成様の眉が下がる。


今の話が本当の話に結び付くなど微塵も思ってなかった私は相槌を打つのも忘れ、呆然と三成様を見つめる。




スッと三成様は私との距離を離す。



「引き留めて悪かったな。
だが、俺を心配させるようなことは慎め。わかったな」


それだけ言うと、私の目を見ることなく部屋を後にした。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ