いつも、貴方の側に…

□2章
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馬が走り出し、十次郎の姿が少しずつ遠ざかっていく。

「あの…信長様、十次郎様は…」


「喋るな、舌を噛むぞ。それと…あいつなら大丈夫だ。気にするな」


信長様にしがみつき、馬の振動に耐えた。





「おい、着いたぞ。目を開けろ」


ゆっくりと目を開ける

……

えっ?これが、西軍の城!?


そびえたつのは普通思い浮かべる城よりはるかに大きい真っ白な城。


「これが…城」


じっと城を見つめていると、信長様が私の手を引き、馬からおろす。


門をくぐろうとしたそのとき、


「華! 信長さん!」


後ろから聞こえる十次郎の叫び声。

振り返ると十次郎がこちらに向かって走っていた。


「ほらな、だから大丈夫だと言ったであろう。あいつはああいう男なんだ」


息を切らしながら近づいてきた十次郎の額にはうっすらと汗が浮かんでいた。


…待てよ、あの場所から城まで少なくとも2キロ近くある。

私たちは馬だったから早くついたけど、十次郎は走ってきた…


って、どんだけ走るのはやいんだよ!!


「ふん、もうついたのか。さすが、脚力だけはあるようだな」



「はぁ、はぁ、脚力だけはとは、聞き捨てならんな

はぁ、はぁ、はぁ、俺も一人の武士だ。これくらい、どうってこと、ない。」


くるりと振り返ると、ついてこいと言わんばかりに手招きをし、信長様は城へと入っていってしまった。


「ごめんな、何も説明できないままこんなことになってしまって

さあ、俺たちも行こう」


「あの、十次郎様」


突然話し方が馴れ馴れしくなり戸惑いを見せる。


「あ、ごめん。突然びっくりしたよな。

これが本当の俺なんだ。慣れてくれ。

あと、その堅苦しい呼び方しなくていい。呼び捨てでいいよ」


呼び捨て…初対面の人を呼び捨てなんて…

でも…


「じゃあ…十次郎」


「よし。じゃあ行こうか」


西軍の城に一歩足を踏み入れた
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