浅い眠り
□会いたくて
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会いたくて、会いたくて堪らない
産科で働く彼、鴻鳥とまだ学生の桜弥
会う時間は必然と少なくなる
更に卒業論文と実習も重なり余計に時間がない
会いたいと思えば思うほど、離れて行くように感じた
実習最終日、無性に鴻鳥に会いたくてペルソナに足を向ける
会いたくて堪らなかった彼を視線に捕らえ、駆け寄ろうとするも同僚達と話をしながら楽しそうな表情を浮かべる彼を見ると、あぁ...私の知らない彼が居ると思った
見るのが嫌で、どうにか足を翻して家に帰った
どうやって帰ったかとかそんな事は覚えていない
ただただ、必死にその場を離れた
暗い部屋に帰り、ベットにダイブする
付き合いだしたばかりの頃に一緒に撮った写真が目に入る
『会いたい』
ただソレだけが言えなくて、涙が溢れた
目を覚ました時には外は真っ暗だった
いつの間に寝ていたのだろうか
重たい身体を起こし、泣き腫らした目を冷す
あの光景を思いだしまた涙が溢れそうになる
自分はまだまだ子供だと実感した
けれど、楽しそうに話す彼を思い出したとき私の知らない顔だったから言いようのない不安だけが押し寄せた
その不安を払拭することはなく夜は暮れていく
まるで、心の中にある闇のように深く深く
このまま、全てを飲み込んでくれれば良いのにと思わずにはいられなかった
『会いたいよ...』
そう呟いた声だけは、闇に溶けていった
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