浅い眠り

□ベルフラワー
1ページ/2ページ

彼女が生けに来て数日、ロビーにある桜が綻び始めた


主張しすぎてはいないが、人目を引くのか人は足を止めてソレを見て笑顔を浮かべる
また、自分もその中の一人である


彼女が嬉しそうに話していた姿を思いだし、思わず笑みが溢れそうになり足早に医局に戻った


『あ、しのりん!桜弥さん来てるよ!』


『私も中庭で会いました!』


花壇の花の植え替えだそうですよ!とニコニコと話す小松と下屋
どうやら、中庭の花の植え替えのようだ


『桜弥、人気だね!定期的に来てくれるし、花も変わるし雰囲気変わって良いよね!』


『...あぁ』


デスクに向かいながら取り合えず返事をする
すっかり彼女は、ペルソナの庭師みたいな感じになっている


普段は花屋で働き、休みの日は時おり様子を見に来ているようだった


『こんにちは!』


医局では普段聞かない声が響く
それは間違いなく桜弥のもの

その手には小さな青い花と一輪挿し


『桜弥さん!』

『その花、可愛いわね!』


ワイワイと響く声に耳を傾ける


『ベルフラワーって言うんです!花言葉は、感謝、誠実、楽しいお喋りなんですよ』


皆さんの雰囲気にあってると思って!と微笑む
その声も、微笑みも心地よい


顔を上げそちらに目をやると視線が絡む
ただそれだけで、心が満たされた気がした


『四宮先生、こんにちは!』


『えぇ...手荒れは良くなりましたか?』



『いえ...一種の職業病ですね』


そう言ってクスクス笑う
そうですか...と素っ気なく返すものの、彼女は心配してくれてありがとうございます!とまた笑みを溢した


『しかし、桜弥さん四宮先生のあの態度に物怖じしないの凄いわぁ』


『そうですか?私は、そう言う所も素敵だと思いますよ』


そう言って、じゃあまだ仕事があるので!と頭を下げ戻っていった




.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ