お昼寝〜鸛鳥中編〜

□音楽と君〜不安〜
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昼休み
一人ピアノの前に座る

救急のお産に、通常のお産が入り皆出払っている

ポーンと1つ音が響く


音楽療法士に夜勤や遅出などはない

定時に病院に行き、定時には帰れる


職場に慣れて思ったこと
他の皆は、慌ただしく働く日もある

病気や、事故だけでなくお産も待ってはくれない

救急で入る事だってある

サクラや、他の仲間を見ていると、私ってなんなんだろう?って思う

そんな事を考えながらピアノを弾いていた
無意味な不安がメロディーに乗っていたのだろうか

後ろから声が聞こえた

『桜弥、音に出てるよ』

『サクラ...ごめん』

無事に終わったのだろう
手術の後だ...多少疲れた表情が見える


『桜弥、君は必要だよ?病院に入院してるお母さんや、子供達にとって...僕に...僕らにとっても』

そっと手を握られて、ドクンと胸が跳ねた

なんだろう...幼い頃には感じた事のない気持ち

『サクラ...』

『ん?』

名前を呼ぶと、変わらず穏やかな笑みが返ってくる

胸が温かくなる

『...ありがとう』

『どういたしまして』

この気持ち...なんだろう
貴方の笑顔で...言葉でこんなに心が解れていく

今は、沢山の中の一人でいいかな

さっきまで纏っていた、寂しい空気が温かくなる


『下屋先生、何してるんだい?』

『小松さん!如月先生にピアノ弾いてもらおうと思ったんですが...』

『あぁ〜、入りづらいねぇ...てか、前よりいい感じ?』

小松の言葉に頷く下屋
二人がくっつくのも、時間の問題か?なんて話ながら医局に戻った事を二人は知らない


『サクラ、今日家に行って良い?』

『良いよ!桜弥のご飯が食べたい』

『ん...分かった』


それから、機嫌のよい鴻鳥の姿と、いつもの桜弥のピアノの音色が沢山の笑い声と共に響いた

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