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□プロローグ
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地獄〜閻魔庁
「小梅さん」
黒い着物に身を包む男が言った。
「主、如何なさいましたか?」
小梅と呼ばれた少女は、男の、鬼灯の前まで駆け寄った。
「先日の定例会議で案が上がった児童の自殺問題について、先程十王の決定を頂きました。長期の視察のため前々から話していた通り、狐の貴女にお願いします。」
「承知いたしました。」
「視察先は私立椚ヶ丘中学校、期間は三年間、教育費は閻魔庁の経費から落とします。この資料に、仮の名字や家族関係等の詳細があります。頭に入れておくように。」
そう言って鬼灯は手に持っていた紙の束を小梅に渡した。
「はい。私立となると、入学試験がありますよね?」
紙の束を受け取った小梅は資料を見ながら質問した。
「勿論です。しかし、大して難しくありません。これ、パンフレットです。」
「設備はとても整っておりますね。あ、この理事長、お若いです。」
「その学校、三年になると一クラス増えるんです。気になり、浄玻璃鏡で確認したところ、成績不良の方達がそのクラスに落ち、他のクラスに差別される仕組みでした。」
鬼灯の言葉を聞いた小梅は、目をパンフレットから鬼灯に移した。
「つまり、反面教師のようなものですか?」
「はい。それだけではなく、落ちこぼれクラスに対するいじめが黙認されているのです。」
「現世のいじめの縮図なのですね。この学校は」
「今回の視察にはぴったりでしょう?」
鬼灯が首を傾げて問えば、小梅は笑顔で頷いた。
「良いところを探してくださり、ありがとうございます。」
「現世の視察と地獄での仕事、両方やっていただく事になりますが、よろしくお願いします。小梅さん」
「はい。」
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