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□三話
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放課後
「寄り道するのか?」
皆が帰宅の支度をしている時、浅野が小梅に問いかけた。
「勿論。スーパーに行って果物買う。」
「そうか。」
浅野は教室を去る小梅の後ろ姿を見つめながら思った。
“‘類は友を呼ぶ’っと言うがアイツの友人はどんな人間だ?”と。
スーパー〜入口付近
潮田 渚は困っていた。
母に頼まれていた調味料を買いに椚ヶ丘のスーパーに来ていた。自分の帰り道に近い所はここしかないため、夏期講習の帰りに寄ったのだが、買い物前にヤンキーに絡まれるとは思っていなかった。
買い物後であれば、所持金のほとんどを使った後だし、母のお使いも達成出来たはずだった。
今日は運が悪い。
「買いもんすんだろう?その分の金寄越せよ。」
「痛いことされたくねぇだろう?」
‘本当にどうしよう...’と思ったとき、
「さっさと金だっきゅぅぅぅ...ぅ」
目の前のリーダーであろうヤンキーがそう言って前屈みに倒れた。股間を押さえていた事から、そこに何らかの攻撃があったのだろう。実際、
「夏の旬はヤンキーのようです。」
と、言った少女が倒れたヤンキーの後ろにいたのだから。
小梅はヤンキーの股間を蹴りあげた足を下ろした。
「おい!大丈夫か!?」
「いやぁ、大丈夫じゃないでしょう。」
「てめぇ、よくも!」
「痛いことされたくなかったら、金出せ。」
「あ?」
「アンタ等がその子に言った事と同じよ。‘痛いことされたくなかったら、金出せ。’」
小梅の態度が気に入らなかったヤンキーが逆上するも、小梅の言葉に言い返せなくなる。
「私達は買い物があるの。邪魔しないで。」
そう言って小梅は渚の手を引っ張って、スーパー内に入った。
店内に入ると、小梅は手を繋いだまま振り向き、話始めた。
「私、加々知小梅。貴方は?」
「あ、えっと、潮田渚...」
「潮田渚くんか。う〜ん、‘なーくん’って呼んで良い?」
「う、うん。」
「ありがとう。私の事、小梅って呼んで。」
「じゃあ、小梅ちゃん...」
「うん!」
ぐいぐい来る小梅に驚きつつも潮田は話しながらお互いの買い物をすることにした。
「さっきはありがとう。」
「気にしないで。今日の占いに‘寄り道したら友達が出来る’ってあったから。楽しみにしてたんだ!」
「そっか。」
「うん。でもね?私は気持ちが傾かなかったら、こんなこと言わないよ?
...私とお友達になってください。」
「...喜んで。」
潮田は小梅が占いに流されやすい子だと思っていたが、ちゃんと自分の意思を持って自分を選んでくれたと分かると、嬉しかった。
「A組とD組って遠いよね?」
「そうだね。休み時間短いし、学校じゃあ、あんまり話し出来ないね。」
「う〜ん。あ!それなら、昼休み学食の隅、占領しちゃおう!」
「占領?」
「そう!‘食べたら長居しない’って貼り紙あるけど、一緒におしゃべりしよう?」
「怒られない?それ...。」
「大丈夫。私に口出しするの、お母さんみたいな隣人だけだから平気。」
「A組、仲良いんだね。」
「いや、他の人とはそうでもないよ。その隣人はいじると面白いから。」
これを聞いた潮田はこう思った。
‘隣の人、きっと苦労してるんだろうな’っと。
地獄で小梅の呟いた一言。
「鳳凰様の占い、これからもチェックしよう。」
...三話終わり