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□四話
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A組〜二学期
「なんだ、体冷えすぎたか?」
肩掛けをして机に突っ伏した小梅に浅野が声をかける。
「...寒い。」
「風邪でもひいたんじゃないか?」
「そんなに柔じゃない。この教室内の人間の感覚がおかしーんだよ。」
「君が慣れていないだけだろう。家で冷房使わないのか?」
「そんな物無い。......ねぇ。」
「ん?」
「フケて良い?」
「...はぁ、今回だけだぞ。風邪で早退した事にしておくから、明日からはちゃんと出席しろよ?」
「やった!外で温まってくる!!」
そう言って小梅は帰宅の支度を適当にして、教室を出た。浅野の叫びも聞かずに。
「.........元気じゃないか!!」
ゲームセンター
「あれ?赤羽くん」
見覚えのある後ろ姿に声をかけると、その人物で間違い無かったようだ。
「ん?あぁ、加々知さん。何?君もサボり?」
「まぁね。」
二人はゲームの音が少ない隅の方へ移動した。少ないっと言っても大きめの声を出さなければお互いの声は聴こえない。
「赤羽くん、何見てたの?」
「クレーンゲームで欲しいのあったんだけど、多分取れない。」
「さっきの‘ソニックニンジャ’ってやつ?」
「そう。それが欲しかったんだぁ〜。フィギアにくっついてるミニストーリーのマンガ、読みたくって。」
「......取れる。」
「え?」
「取ってあげるから、‘小梅’って呼んで。」
「簡単にはいかないよ?まぁ、取れたらね。」
小梅はクレーンゲームに歩み寄り、前と横から獲物の位置を確認した。
そして100円を投入、2つの矢印ボタンを押した後、決定ボタンを押す。
後ろで見ていた赤羽は取れるかもしれないっと興奮を押さえていた。
ガコンッ
フィギアは見事、取りだし口に落ちた。
小梅が取りだし、誇らしげに掲げた。
「どーよ!!」
「スゲー!!!100円で取った!!」
この時の赤羽の表情はただの中学生だった。学校で噂の不良とは似ても似つかなかった。
「私、凝り性だから何でも極めたくって、クレーンゲームも一時期填(ハ)まっちゃって...。」
「ホントありがと、小梅ちゃん。」
「どーいたしまして。」
「小梅ちゃん、この後、暇?」
「暇。」
「じゃあさ、駅前のカフェ行こう。奢るから。」
「わぁー、太っ腹。ゴチになります。」
駅前のカフェ
「相変わらず甘党だね。」
「お互い様でしょ。後、俺の事‘カルマ’って呼んで良いよ。片方だけだと違和感あるし。」
カフェの窓際の席に座り、それぞれ注文をした。カルマはイチゴパフェ、小梅はフレンチトーストのメープル付き。
「‘カルマくん’、か......。じゃあ、‘カルくん’!」
「‘じゃあ’の意味が分からないけど、まぁ良いよ、それで。」
「そういえば小梅ちゃん、期末テスト遊んだでしょ?」
「バレた?」
「やっぱり。ウチの担任が愚痴ってたよ。‘加々知の奴、全教科80ピッタリ取りやがって’って。」
「D組の担任、大野だよね?今度シバこう。」
「まさに、‘口は禍の元’。」
「ソニックニンジャって人気なの?」
「まぁね。俺は監督が好きでさ、フィギアのミニストーリーもその監督が作ったらしくって、読んでみたかったんだ。」
「喜んで頂けて幸いです。」
その後も話しは盛り上がり、気が付けば一般生徒の下校時刻になっていた。学校関係者に見つかると面倒なので、二人はそれぞれの帰路についた。
この次の日に、カルマと渚が友人だったと知った小梅でした。
「...はっ!三角関係!?」
「なんでそうなるの!?」
「あはは!いいね、それ。」
「よくないよ!!」
「なーくん、今日もツッコミお疲れ様。」
...四話終わり