『さよならをキミに』
□密かごと 中編
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「もしもし?聞いてる?清香ちゃん」
「うん?あ、ごめん、ちょっとボーッとしてた、、、」
「え?何?何?何かあった?」
「ううん、それで、それで?藤堂くんとはどうしたんだっけ?」
「うん、だからね、お揃いのTシャツを着るかどうか少しだけ言い合いになっちゃってさ、でも、結局どっちでもいいやって、、、」
「うん、、、うん、、、そうなんだ、、、」
久しぶりに千鶴と電話。内容はもちろん、彼女の彼氏の話を聞くだけ、、、なんだけど、、、
「もー、ほんと、あの映画面白いよー。清香ちゃんも観てみてよー」
「うん、そうだね」
「、、、、」
「、、、、?千鶴?」
「あ、ごめん。ねぇ、清香ちゃんさぁ、最近、何かあった?どう?そういえば、就活は?してるの?」
「あ、、、うーん、、、まあまあかなぁ」
「まあまあ、ねぇ。とりあえず、講師登録ってのはしたんでしょ?」
「うん、昨日さっそく行ってきた。何か担当の方も良さそうな人で、希望は見えてきたかも」
「そっかあ!良かった。清香ちゃんもいよいよ本当に先生になるのねー」
「ううん、まだ採用試験とは違うんだから」
「でも生徒からすればさ、先生なんだから!大丈夫、清香ちゃんはしっかりしてるし、採用試験なんて、来年はトントントンって合格しちゃうよ」
「もう、、、千鶴ってば!」
「ふふ、、、楽しみだね、社会人!」
「まだ登録しただけだし、呼ばれるかどうかは分からないよ」
「えー、じゃあ、呼ばれなかったらどうなっちゃうの?フリーター?」
「うーん、そうだよねぇ、、、どうなっちゃうんだろ」
「そんな、清香ちゃん!大学出たら一人暮らしでしょ?もちろん私は清香ちゃんの夢、応援するけどさ、企業で正社員なんかの話も、押さえといた方が良いんじゃない?」
「うーん、、、それはそうなんだろうけど。なんだか気が乗らないのよねぇ」
「清香ちゃーん、心配だよー」
「あはは、ありがとう千鶴」
「あ、もしフリーターならさぁ、塾の先生とかは?それなら勉強しながら働けるんじゃない?お給料も良さそう!」
「なるほどねぇ、、、そう、そうだねぇ、、、」
塾の先生か、、、
そう思うと同時に、清香は土方のことを考えていた。
「清香ちゃん?どうした?寝る?」
「千鶴、ありがとう、、、私、ちょっとやってみようかな、就活」
「おお!うん!頑張って、清香ちゃん。応援してるから!また話そう?」
「うん!ありがとう!じゃあね」
おやすみー、と嬉しそうに電話を終えた二人。清香はまだ少し気持ちが浮ついているような感覚に襲われる。
「土方先生に、また会いに行ってみようかな、、、」