フィルム越しから愛を

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「……おや。」

放課後。
下駄箱に入っていた一枚の手紙。
これはまさか、お約束のアレではないですか!?

「今すぐ体育館裏へ……よし行こう。」

丁度、天火君の部活写真を撮ろうと体育館へ行こうとしていたところだ。裏へ寄るくらい、どうって事ない。
こういうのは女子からか男子からかの二通り。嗚呼、楽しみ!

「あら、来てくれて嬉しいわ。天原さん」
「あ……貴方は!」

数人の女子を従えて優雅に佇んでいた三年女子。
後ろに薔薇が見えるようだ。

「三年生で一番綺麗と言われている美少女先輩!……すみません、気持ちは嬉しいんですが私にそういった趣味はなくて。」
「誰が貴方に告白なんかするもんですか!」
「……え。」
「えって何。まさか本当に私が貴方に告白すると思ってたの⁉
ちょっ、そんな悲しそうな顔しないでよ。」

まさかまさかまさか、一人で告白されるかもと舞い上がって勘違いしていた……だと!?
私は初めから先輩の手の上でコロコロと踊らされていたというのか!

「くっ、まるでピエロだ。」
「それが言いたかっただけよね!?」
「……あの、そろそろ本題を。」

後ろに控えていた女子Aが本題から脱線していた事にやっと気付いたらしい。

「そうだったわ。
貴方、曇くんにあまり近付かないで欲しいの。」
「天火くんに?」
「ええ。最近、貴方と曇君の関わりが増えているのをずっと見ていたわ。ハッキリ云って目障りよ。」
「いやいやいや。何を勘違いしていらっしゃいますか!先輩。」

演劇さながら、大袈裟な身振り手振りで先輩の発言を否定する。
私と天火君に関わり!?周りからはそう見えていたのか。
思わぬ失態。

「私はただのストーカー。天火君をカメラに収める事に生きがいを感じる天火君専用カメラマンです!あなた方のような美人な先輩に張り合うつもりなど、毛頭無いのですよ。先輩方、私の事は空気と思ってくださればよいのです。そう、天火君の側に張り付いている埃だと思えば私の事など気にならないはず!」
「……虚しくならない?」
「先輩方のその視線が胸に刺さるくらいですよ……っは!天火君の声。今は試合中ですかね!失礼します、先輩方。私は天火君の勇姿をカメラに収めねばなりませんので!」

体育館裏に冷たい風が通り過ぎる。
ポツンと残されたのは、嵐のように去っていく陽を哀れみを帯びた瞳で見つめる先輩方。

「……ここから体育館の人の声なんて聞こえる?しかもストーカーって。」
「自分の事も空気や埃と認識してくれって。」
「……あの子をライバル視した私たちが馬鹿だったわね。」

既に先輩には目もくれず体育館まで猛ダッシュする後ろ姿を見て、リーダー格の美少女先輩の心は急激に冷えていく。

美少女先輩は後に、彼女を相手にするのは時間の無駄と語ったそうだ。

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