フィルム越しから愛を

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「キャーッ!!一本とった!流石、天火君!」
「#name#、もう少し静かにしてくれる?」
「だって妃子、見た?あの素晴らしい剣捌き。蒼世も強いけど、やっぱり天火君の方が一枚上手だと思うんだ。」
「あら、それはどうかしら。蒼世ね、天火の勝利数に近付いてきてるのよ。」
「……なんと。」

まじですか。
まぁ、それはそれで面白そうだけれども。

「ったく、そんなに毎日見に来るくらいなら、剣道部に入ってもいいんだけどな。」
「お断りします、大湖先生。
あ、今日も格好良いですね。流石、天火君の父上。」

私の胸にホールインワンの人物。
国語の先生で、剣道部の顧問。この先生が教える剣道部の教え子達は必ずといっていいほど全国大会に出場しているらしい。

「はい、チーズ。」

パシャッ

大湖先生と妃子のツーショット。我ながら上手く撮れている。
それにしても、格好良いなぁ。天火君。先生がホールインワンなら天火君はドストライクホールインワンだよ。
これだけは譲れない。

「あー、格好良い。部活のときはスイッチが入ったみたいにキリッとしてるもんな。」
「俺はお前が犯罪の道に行かないか、心底心配だ。
天火に何かあったら、覚悟しとけ。」
「やっだー、先生。それ私が天火君に何かしたら容赦無くボコボコにするって聞こえるんですけど。」
「そう聞こえたなら良かった」
「そんな清々しい笑顔で云う事ですか!?
まぁ、ご安心を。私物を盗んだり、トイレや自宅までを盗撮なんてことは無いです!私は清く正しく美しい盗撮をしているんですよ!」
「盗撮自体、清くも正しくも美しくもないわよ。」

頭を押さえて溜息をつく二人。それでも私からカメラを取り上げない彼らはとても優しい。

さて、とカメラを構えると天火君が此方に顔を向けた。視線は真っ直ぐカメラへ。そのまま笑顔で近づいてくる天火君。
……かわいいなぁ。

「#name#!さっきの見たか?」
「はい!流石は天火君。身の捌き、剣の捌き、力強さ 全て見させて頂きました!
そしてお願いします。それ以上、近寄らないで下さい。」

ジリジリと天火君が近付く。距離を一定に保てるように、私もジリジリと後退する。

「仲良いな、あいつら。」
「はい。天火殿は#name#に近付くのが楽しいみたいです。」
「この前は天火が教室で堂々と可愛いとか公言してましたよ。」

今日の記録を書き終わった牡丹と休憩中の比良裏が大湖へ告げる。
二人の言葉を聞いた大湖は目を丸くして天火を見た。

「それって、あいつ……#name#の事が……うわぁ、やだもう。」
「さぁ、どうでしょう。本人に自覚はないみたいですから。」
「あ、気絶した。」

悪戯のつもりで抱きついたのだろうか。#name#は石のように固まると、顔を赤く染めてバタリと倒れた。
その様子に蒼世が駆け寄り、顔を顰めて天火を睨みつける。

「お前はまた……。」
「仕方ねえだろ!可愛いんだから。それに、おもしれえし。」
「今日は俺も天原に用があったんだがな。」
「何の用だよ。」
「生徒会の予定についてだ。」

どんどん険悪な雰囲気を醸し出す二人の手には竹刀が握られている。
牡丹と妃子が#NAME1#を救出してから直ぐに打ち合いが始まった。若いって素晴らしい。

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