フィルム越しから愛を

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「来月の行事だが……。」
「体育祭ね。」

前に立って話しを持ち出すのは、我が校の生徒会長と書記の妃子。

そう!今月は体育祭。
暑い中のスポーツはかなり……否、とても面倒だけれど天火君の珍しい姿が沢山撮れる大チャンス!
今からでもカメラを手入れしたいくらいだ。

「撮りたいよー。」
「陽、仕事。」
「分かってるよ。だけど手が進まない。何も思いつかない。
今頃、あっちは輝いているんだろうな。キラキラ青春モードだろうな!天火君のパワーで!」
「まぁ、落ち着きなよ。」

スッと差し出された お茶。
首を上にあげれば、爽やか系イケメンが笑っていた。
会計の金城 白子君。その顔や性格から女子からの支持は高く、一日の殆どを天火君の隣で過ごしている人物。
だから私の写真には彼も写ることが多い。

「なんで私が副会長!?この役職さえ無ければ今頃、天火君の見目麗しい姿を撮れているのに!」
「先生や生徒からの投票なんだからしょうがないだろ。俺も何で陽が副会長に選ばれたのか分からないくらいだし。」
「失敬な!」
「だって貴方、天火の事を除けば完璧じゃない。意外に先生や生徒からの評価も高いのよ。」
「そもそも副会長に立候補したのはお前だ。文句を言うな。」

鼻で笑いやがったな⁉ロン毛イケメン。
まぁ、そのとうり。副会長に立候補したのは私自身。
何故かって?

「生徒会室が素晴らしいシャッタースポットだったから立候補したんだよ!でも考えてみれば剣道部の活動って殆ど屋内だった!」
「馬鹿ね。」
「馬鹿だね。」
「馬鹿だな。」
「皆して馬鹿よわばり!?まぁ、そのとうりだけどさ。」

冷めた目で馬鹿よわばり。嗚呼、初めは傷付いていたな。
今の私はそれを耐えれる素晴らしい精神を持ち合わせているけれど。

「……天火君!?」
「え?」

この遠くから近付いてくる声と足音。私が聞き間違えるはずがない!
カメラを構え、部屋の隅へ移動する。光良し、角度良し。準備バッチリ。

三人から蔑むような視線を送られても気にしない!

「蒼世くーん、終わった?」
「本当に来たか……。
まだだが、何の用だ?天火。」
「基本稽古 終わったから、こっちもそろそろ終わったかと思ってな。」
「生憎、まだ……。」
「終わりました!
一応、学校にある機材とかで考えて 一年、二年、三年生の種目を纏めておいたからチェックお願い。」

エネルギー補充完了!こんなもの直ぐに終わらせて部活を見に行こう。そうしよう。
天火君を待たせるなんて、以ての外だ!

「出来るなら初めからやったらどうだ。
……特に目立った問題は無いな。修正点があれば、こちらで直そう。」
「じゃあ俺は帰るついでに鷹峯先生にコレを渡してくるよ。」
「おー。また明日な!白子。」
「うん、またね。お疲れ様。」

ヒラヒラと手を振って教室から出て行った白子君。そういえば、と私は周りを見渡した。

「鷹峯先生は?」
「さぁ?いつも通り生徒会の事 忘れてるんじゃないかしら。」
「まったく、けしからん!」
「鷹峯先生も、お前にだけは云われたくないと思うがな。」
「なんだとぅ⁉鷹峯先生よりは真面目にやっているさ!」

そう私が言ったのと、ほぼ同時にガラッと扉が開く。
ま さ か、と壊れた玩具のように顔を後ろに向けると我が生徒会顧問の鷹峯先生が佇んでいる。背後に般若の面が見える。

背後に般若の面。身体からは怒りオーラ。顔面に不吉な笑みを浮かべて私をジッと見ていた。
身の危険を察知しました。

「良い度胸だ。
天原、ちょっと職員室まで来い。」
「拒否権を使用します。」
「無いに決まってんだろうが!」

首根っこを掴まれ、ズルズルと引き摺られる。
仕事、真面目にやって損した。

「……では、解散。」
「後で慰めてやろうな。」
「そうね、ジュースでも奢ってあげましょ。」

(また仕事サボったのか?)
(はっ、残念でしたね。今日は全て終わらせましたよ。そのプリント、私が作りましたから。先生は生徒会をお忘れになっていたようで。)
(残念だったな。今日は部活の用事で行けなかっただけだ。さあ、謝罪の一つでもいれてもらおうか。)
(なん…だと!?)

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