フィルム越しから愛を

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空には雲一つ無く、風も無い。一日中、外にいる生徒にとっては最悪の天候ではないだろうか。
そういえば、天気予報のお姉さんが今日は30度超えるとか云ってたな。

開式の言葉と司会は校長の岩倉先生と蒼世が務め、何事も無く終わる。
競技の準備が出来るまでの待ち時間。天火君の写真を撮りまくっていたときだった。

「天火にーちゃん!」

観客席の方で小学校低学年くらいの男の子が天火君に向かって手を振っていた。
眉や瞳の色が天火君そっくりで、これはまさか……とカメラを構える。

「空丸!宙太郎!」

天火君もパッと笑顔になって、空丸君という男の子の元へ向かう。間違いない。ご兄弟だ。
まさか、その後ろで母親に抱っこされている男の子も!?
なんて可愛いんだ!!お母様も美人!

カシャッ

「ご馳走様です。」

大湖先生は渋い系。天火君は格好良くて可愛い系。空丸君はスーパー可愛い系。宙太郎君は癒し可愛い系。お母様はスーパー美人。
素晴らしきかな、曇の遺伝子。
おっと、涎が。

「……兄ちゃん、あの人、何?」
「にーちゃんの友達だ。挨拶できるか?」
「うん!」

あ、もしかしなくても行かなくちゃいけない雰囲気だ。
空丸君、宙太郎君、天火君のお母様はニコニコ笑いながら私が来るのを待っている。あ、鼻血出そう。


「天火君は少し離れていて下さい!
始めまして。天原 陽です。」

いつでも始めが肝心だ。
ニッコリと優しげに笑ってみせる。
「うわっ、凄いキャラ作り。」とか言った奴、後で覚えてろよ。

「曇 空丸です。始めまして!」
「くもう ちゅうたろうです!」
「曇 天火の母親の小雪です。天火がいつもお世話になっています」
「可愛い……美人……っは!
い、いえ!こちらこそ天火君には、いつもお世話になっています。」

胸の辺りがキュンとする。
どうしよう、新たな扉が開きそう。

《えー、天原 陽。今すぐ職員室に来い。……空丸と宙太郎と小雪にまで手を出そうとしたら命は無いと思え。》

「あら。」
「父ちゃんの声だ!」

あれだけ暑かったのに、急激に寒くなった気がした。

あれ?学校の放送って殺人予告に使うようなものだっけ?
それよりも何処から見てるんだ、大湖先生。

「……行ってきます。」
「おう!頑張れよ!」

て…天火君からのエール!?
今なら何があっても生き残れる。

覚悟を決めて素直に職員室へ向かうことにした。逃げたらもれなく鷹峯先生もついてくるのは想像に容易い。それなら素直に行った方がいいでしょう。

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