フィルム越しから愛を

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あの後、ぐったりとした表情で気を失った陽。
よほどショックが大きかったらしく体育祭終了まで目覚めないでいた。もう日も暮れ、学生や親が下校を始める頃。一部の生徒と教師は皆、保健室に集まる。

集まった学生達は気絶した陽の前でおこっている出来事にポカンと口を開けていた。

「まさかお前が来てたとはな。」
「だってよー、俺だって陽の勇姿くらい見たいんだよ。」
「お前が来ると分かってたら、あんな借り物の内容は書かなかったんだがな。」

仲良さげに話を進める陽の兄と鷹峯と大湖。
そんな中、状況を把握しようと声を発したのは生徒会会長だ。

「先生方、お知り合いで?」
「ん?ああ、お前が今の生徒会長か。
俺は天原 陽助。鷹峯とは高校での同級生。大湖さんは昔、世話になった恩人。で、陽の兄だ。」
「ちなみに、高校生時代は生徒会長だ。お前達の先輩だな……で。」

鷹峯は蔑むようにベッドを見る。
鷹峯の視線の先には気絶している陽に頬擦りする陽助の姿。
見慣れていない生徒達は完璧に引いている。
まだ夢の中の陽も眉を顰めて唸った。悪夢を見ているようだ。

そんな陽助の頭を叩いたのは我らが教師、大湖先生である。

「やめてやれ。」
「重度のシスコンだ。」

チッと舌打ちした陽助は目の前で引き気味の生徒達を見渡す。
その目は先程巫山戯ていた人物と同じとは思えない程、冷たく鋭い。

「……こいつらが陽の友人ですか?」
「そう睨んでやるな。
右から息子の天火、会長の蒼世、書記の妃子、会計の白子、剣道部マネージャーの牡丹に、陽のクラスメートの比良裏だ。」
「……へぇ。」

品定めするような瞳に負けじと見つめ返す6人の瞳。
暫く見つめ合いが続き、先に目を逸らしたのは陽助だった。

「陽の荷物はこれですよね?」
「ああ。気を付けて帰れよ。」

陽を横に抱き、荷物を肩に背負った陽助は真っ直ぐに保健室を出ようとする。
扉を開け、閉める直前に刃物のように鋭い瞳が再度天火達に向けられた。

「お前達だけは裏切ってくれるなよ。」

それだけ言い残し閉じられた扉。
保健室には何とも後味悪い空気が漂っていた。

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