フィルム越しから愛を

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ねえ、聞いた?天原先輩の事。


聞いた聞いた!また可笑しな事してるらしいよ


あの金城先輩の弟と一緒にいるんだってさ。まあ、変人同士お似合いじゃない。


確かに。曇先輩に安部先輩に金城先輩……仲良くしすぎだったよね。
佐々木先輩と牡丹先輩はいいけど、天原先輩はちょっと納得いかないな。


そう?私は佐々木先輩も牡丹先輩も天原先輩と仲良かったし、二人も同類かと思ってた。


でも最近、あの二人も一緒にいないよね。喧嘩でもしたんじゃない?天原先輩についていけなくなったから!


あり得る!
あの二人も変人にはついていけなかったんじゃない?よかった!佐々木先輩と牡丹先輩が天原先輩と離れてくれて。てかさ、あの人が生徒会委員とかあり得ない。
あ、そういえば……これは知ってる?私、天原先輩と同じ中学校だったんだけどさ。


え、なに?中学でもあんなストーカー紛いの事してたとか?


違う違う!もっと凄いの。
私は噂でしか知らないんだけど……。


──────



「こったろうくーん、あっそびっましょっ!」
「……馬鹿か、お前は。」

「まぁ!酷い。オトモダチに対してそんな態度……。」
「そのオトモダチとやらになった覚えはないがな。」

はっ、と鼻で笑う包帯少年。
新しい仲間が冷たくて早くもライフゲージは0に達しそうだ。

「…お前の噂を聞いた。俺といるせいで悪い噂が流れている。早く俺から離れた方が身の為だ。」
「あら、心配してくれてるの?小太郎君ってばやっさしー。」
「殺すぞ。」
「訂正、凄く怖い。
イタタタッ!ごめんなさい!割り箸で突かないで!」

なんとも悪い顔で腹や腕やらを突いてくる小太郎君。勢いが強くて地味に痛い。
でも そんな小太郎君の耳は少し赤く、その行為も照れ隠しと受けとれる。
フッ、心配だなんて可愛いところもあるじゃないか、このツンデレめ!

「何故機嫌が良い。気持ち悪い。」
「ふふふふ。お主も可愛い奴よのう。」
「……変な奴。」
「失敬な!」

かなり引き気味で私を見る小太郎君は一言、変な奴と言い残し屋上から去っていった。
小太郎君は優しい。傷付く事は云わないし、気遣うような態度も見受けられる。
口は毒を吐くが、行動は優しさで満ち溢れているのだ。今迄に接した事がないタイプの人。蒼世に似ているが、全く違う。

ふと、天火君の声が聞こえる。
屋上から下を見れば、笑顔で校庭を駆け回る天火君が眼に入る。カメラを構えてフィルム越しに彼を見れば、天火君は太陽のように輝いていて私には眩しすぎる。

「……綺麗。」

それは崇拝にも似た気持ち。
恋い焦がれても届かない太陽。
せめてその姿を留めておきたくて、私はまた彼を撮るのだ。

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