フィルム越しから愛を

□014
1ページ/1ページ



あの一件から一夜明けて、現在。
さぼっちゃったよ、授業。もう昼休みだし。
あーあ、副会長がサボりなんかしちゃってさ。どうなってるんだ、この学校。
解任かなぁ。

「何を聞いている。」

例のごとく横でパンをもそもそと食べている彼は首を傾げてこちらを見ていた。なんだか食べ物を頬袋に入れる様がハムスターみたいで可愛らしく見える。
そんなこと言ったら殺されそうだから、絶対に言わないけどね。

「ん?興味ある!?」
「やっぱり言わなくていい。」
「いやいやいや、そこは聞いておくべきだと思うよ?我が友よ。」
「友になった覚えはない。」

相変わらず冷たい!君は私専用のブリザードマシーンか。

「ああ、ここに居たのか。」
「何か用か?」
「いや、今日は陽に用があって。
天火の居場所を知らないか?」
「天火くん?えっと今は……裏庭かな。」
「そうか、そこは探してなかったな。ありがとう、行ってみるよ。」

ナチュラルに現れた白子君は天火君の居場所だけを聞いて去っていく。
え、サボりに対して何もなし?まさか彼も実は不真面目ボーイか!新たな一面を見たなぁ。

「さてそろそろ私も……。」
「ちょっと待て。何故分かった、曇 天火が裏庭にいると。」
「周りは賑やかじゃないし、何より天火くんが猫と戯れている声が聞こえるからだよ。最近裏庭に猫が現れてね、お腹が空いていたその猫を天火くんはどうしたと思う!?なんと出会ってから毎日牛乳とパンの切れ端をあげてるんだよ!お弁当があるのにわざわざ購買まで行って牛乳とパンを買ってから裏庭に行くんだ。しかも自分のおこずかいからお金を出して!金欠なのになんて優しいの!?もう天火くん大好き!天火くんラブフォーエバー!!」
「気持ち悪い……。」

……うん、否定しない。これは流石に私も行き過ぎたと思う。
耳にさしていたイヤホンを外して溜息を一つ。

「曇 天火に盗聴器を付けているのか?」
「天火君に!?そんな盗聴器が付けれるほど近くに寄れるわけないじゃない!それに、私は犯罪紛いのことはしないよ。
私は清く正しく美しいストーカーですからね!」
「いや、盗聴自体が犯罪だ。」

ごもっともです。

「まぁ盗聴器付けてるのは……色々。」
「色々……。」
「うん、色々。」
「まさか、ここには……?」
「ツケテナイヨ。ツケテナイ。」

お互いの間に沈黙がおとずれる。
バレてはないはずだ。我ながら完璧な嘘のつき方だった。
ほら、小太郎君だって何も言わず笑顔……じゃない!怖いよ、真顔怖い!

「吐け!どこにつけた!どこにっ!」
「何故バレた!」
「バレバレだっ!目も逸らし、口調も片言。逆に何故バレないと思った。」
「失礼な!これでも真剣な嘘のつき方だよ!
まぁいい。嘘を見破った小太郎君には教えてしんぜよう。
あの扉の上の突起物だよ。」
「ちっ。」

バキィ、といわせんばかりの勢いで盗聴器を取った小太郎君はこちらをひと睨みして去っていった。
おお、怖い。

「しっかし甘いな!小太郎君よ。」

扉の内側の分かりにくい場所。
実は、もう一つあるんだなぁ、盗聴器。
素直で可愛いよ!小太郎君。ほんと、素直すぎて心配になっちゃう。

「まぁ、そこが好きなんだけどねぇ。」

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ