翡翠とアメジスト

□夏休みをロスで
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警察が来るまでに空瑠はカフェ内の造りを見るため辺りを見渡していた。

そのあとは到着した警察と白馬、空瑠の推理によって空瑠が見たというあの店員が容疑者となったが本人は否定するばかり。

「困りましたね」

白馬も後一歩というところで追い詰められないでいた。

そう、硝煙反応が出ないからである。

{『スカーフはどうされました?』}

空瑠はずっと疑問に思っていたことを聞いた。

{「スカーフならしているだろう!」}

怒る店員だが、空瑠はそれを無視して

{『あなたのしているそれは、あなたのではないですよね?』}

確信のある言い方に店員は一瞬目を泳がせた。

{『あなたは坊主頭、なのに何故そのスカーフに金色の短髪の毛が付いているんでしょうね?』}

犯人からは見えない位置についていたその金髪を空瑠は指で摘んだ。

{『あなた自身のスカーフは血痕がついたか、硝煙が付いたかしてしまい処分した。違いますか?』}

有無を言わせないその言い方と排水口から切り刻まれたスカーフが発見され店員は肩を竦め自供し始めた。

警察に連れて行かれるその様子を見送り空瑠もカフェを出ようとしたが

「空瑠さん」

後ろから呼ばれ振り返れば白馬がいた。

「あなたと一緒に推理ができたことを僕は忘れません。それより、あなたは探偵を名乗るべきですよ。僕はそう思います」

それだけ言うと白馬は空瑠に名刺を渡し背を向けて歩き出した。

『名乗りませんよ。探偵は』

聞こえていないだろうが溜息混じりに空瑠は言葉を零した。









ロスの家へ帰るべくタクシー乗り場に向けばクラクションを鳴らされた。

目の前で止まったその車はシボレーで

「また会ったな。空瑠」

『赤井さん・・』

助手席を勧められ空瑠はロスの家まで乗せてもらうことにした。

車の中で漸く連絡先を交換し合い空瑠がロスに居る間、赤井の時間が許す限り会うことを決めた二人だった。

『(いいのかな・・FBIがこんな小娘と会ってて・・でも、この時間が意外に好きだったりするな。私は)』

シボレーの助手席でそんな事を思う空瑠だった。

「(惹かれている自覚はあるんだよな。調べたからわかったが・・・しかしそれとあの射撃の腕の説明がつかんな・・まぁ、空瑠が話してくれるとは思えんが・・待ってみるか)」

赤井もまた空瑠に惹かれ始めていた。
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