蒼と翡翠の想い

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空瑠が困惑の声を出せば

「10日前の事件が空瑠くんを悩ませているんだろう?」

確信のある言い方に空瑠は苦笑しか出てこず

『・・・違いますとは言えません』

「そうか・・。あまり根を詰めすぎんでくれ。わしが佐藤君たちに怒られてしまうからね」

そう言って笑いながら電話は切れ『空瑠は溜息を吐きながら携帯を耳から離した。

『美和子たちに怒られるって・・まぁ、休んでないのが悪いか』

空瑠は本庁に置いてきた愛車を思い出すが今から行った所で帰宅を命じられるのは目に見えており

‘グラッ’

『っと・・』

何度か起きている目眩に空瑠は足を一歩踏み出すことで耐えるが

『流石に辛いな』

苦笑しながら通りに出るため歩き出そうとすれば

「空瑠か?」

後ろから掛けられた声に振り返れば

『あ・・かい・・さん?』

そこにはアメリカにいた頃と変わらず真っ黒な服に身を包みニット帽を被る長身の男性、赤井秀一の姿があった。

唯一違うとすればアメリカの頃は長かった髪の毛がバッサリと切られていること。

『赤井さん?』

「あぁ、仕事で日本に来ていてな」

空瑠が確認するように再度名前を呼べば驚きに目を見開いていた赤井はフッと笑みを零しながら空瑠の傍までやってきた。

『驚きました。髪、切られたんですね』

「あぁ、験直しにな」

切られた髪を手で触りながら赤井は答えるが

「仕事が忙しいのか?」

ふと空瑠に視線を戻した赤井は空瑠の目の下にくっきりと浮かぶ隈に眉を寄せながらその部分に触れた。

『えぇ。少々仕事が立て込んでいまして・・流石に上司から休むように言われました』

先程の電話を思い出し空瑠は苦笑しながら答えた。

「そうかこれから帰るのか?」

『帰るにしても足がないので通りまで出てタクシーを拾おうかと思ってます』

肩を竦める空瑠に

「送ろう」

赤井は即答で返事をした。

しかし空瑠は仕事で来ていると聞いた以上そうは行かないと拒否をしようとするが

‘グラッ’

『っ・・』

体は正直というのか限界が来たというのか、空瑠の体は傾きそのまま視界は暗転した。

「おいっ!」

流石に目の前で倒れそうになった空瑠に赤井も驚き慌てて抱きとめるが赤井の呼びかけにも答えず空瑠は気を失った。

赤井は空瑠を抱き上げその顔を覗き込むがよくよく見なくとも目の下には濃い隈が出来ており頬も幾分か窶れていた。

その様子に眉を寄せた赤井は

「・・・結局家を聞きそびれたな」

とりあえず愛車まで運ぼうと足を踏み出した時にそのことを思い出し

「仕方ないな」

空瑠の家が分からなければ選択肢は自ずと絞られ赤井はその決断に至るまで数秒、もう一度空瑠の顔を見て幾分かその歩く速さを早めた。
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