翡翠とアメジスト2

□閑話
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頭を撫でられる感覚に空瑠の意識が浮上し始めた

『ん・・・』

目を開けることはせずその手に擦り寄ればフッと笑う声が聞こえた。

漸くそこで目を開ければ肘で体を支えるようにしてもう片方の手で頭を撫でる優しい眼差しをした赤井がいた。

『(昨日はあのままマンションに来たんだっけ・・)おはようございます』

「あぁ、おはよう」

頭を撫でていた手はするりと頬を滑り喉の辺りをくすぐってきた。

『んっ・・』

くすぐったさに空瑠は首をすくめるようにして逃れればくっくっと喉を鳴らして笑う声が聞こえてくる。

『楽しんでます?』

睨むようにして見上げれば今度は頬を撫でられる。

「楽しんでいるかと言われれば楽しんでいるかもな」

あっさり肯定する赤井に空瑠は溜息を吐いて起き上がろうとするが

「まだ起きなくていい」

『わっ!』

腰を引かれ支えていた腕はバランスを崩し倒れたのは赤井の胸の上。

『だから・・いきなり引っ張るのやめてください。それと落ちる位置・・そこだとお互い痛くないですか?』

指を指すのは赤井の胸元。

筋肉のついたガッチリした体であることは抱きしめられた時に分かるが、如何せんその筋肉が痛かったりする。

「俺は被害がないからな。空瑠が嫌だというなら止めるが?」

どうする?と目で訴えてくるのが反則だと空瑠は内心思うが・・

痛みはあるが抱きしめられたりすると落ち着くのは事実であり止めたくないと思ってしまうのもまた事実。

『やめて欲しくないです・・』

「やっと言ったな」

昨日からこんな感じであり空瑠のさせたいことを言うように赤井は誘導していた。

『迷惑じゃないんですか?』

抱きしめられながら空瑠は問うた。

今まで甘えるということをしてこなかった故の戸惑いである。

赤井もそこは承知しているためその質問に対する答えは言葉でなく上から降ってくるキスである。

「俺が、こうしたいからな」

結局、こう言って赤井は空瑠を甘やかすようにしている。

『昨日から散々・・そのうち融けるんじゃないかと思えてきました』

甘すぎてとおどける空瑠に赤井は笑みを零し

「融けるまで甘くするのもいいかもな」

と冗談なのか本気なのかわからない言葉を残して起き上がった。勿論その上にいた空瑠も必然的に起きることとなり

『ん〜』

軽く伸びをすればロンティーの袖が下がり顕になる弾痕や手術痕。赤井はそれを見つめ空瑠の腕を掴んだ。

『秀一さん?』

いきなり掴まれたことに瞬きする空瑠を見ながら赤井はその痕に唇を寄せた。

『!っ』

「消えない痕は俺も持つが出来ることなら空瑠のこれは消えてもらいたいと思う。夏場が辛いだろう?」

『まぁ、半袖とかは着にくいですね』

周囲の目が有りどうしても着にくくなる。

何度か赤井はキスを落としその腕を撫でた。

少しでもこの痕が消えるようにと祈りながら。

『秀一さん、そう言えば仕事は?』

「あぁ・・本部に行かなければならないんだが、ボスから空瑠も連れてきてくれと言われてな」

『ジェームズさんがですか?』

「あぁ、一応前にジョディに渡したものと同じものを渡したんだが詳しい話が聞きたいらしい」

『そういうことでしたら』

了承した空瑠は先にベッドから降りて朝食の用意をしようとキッチンに向かうが

「このまま食べに行くか。その足で本部に行けばいいだろう」

呼び止めるように言われたため空瑠は頷いて出かける準備をした。
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