翡翠とアメジスト2
□4台のポルシェ
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灰原が風邪を引いたというコナンからの電話で空瑠は阿笠邸に来ていた。
『んで?どこに行っていたって?』
「東都現像所だ。どうもそこで誰かに見られててな」
『それは確実?』
「あぁ、狙いは俺か、灰原か・・奴らじゃねぇと思いたいんだがな・・・」
『・・・(確実にそれ秀一さんだな。最近帰れないって言ってたし、となると尾行はFBIか?)』
「昨日帰ってきてからじゃよ。哀くんが熱を出したのは」
『よっぽどストレスになってるんだな』
灰原の額にあるタオルを水に浸し乗せてやる。
『(当分、秀一さんにはこっち(工藤邸)には近づけないようにしよう。哀に余計な不安は与えたくないからな)』
その上から頭を撫でる空瑠だが思うことは別のこと。
「ケホッケホッケホ・・ただの風邪なのに貴方や空瑠さんにまで来て貰うことなかったわ・・それよりも大丈夫なの?あなたが尾行されたりしてたら博士まで・・」
「大丈夫だ心配するな。誰も尾行しちゃいない」
『外の様子も見たがこの家を見張る車もないから安心しなさいな』
諭すように空瑠は灰原の頭を撫でた。
『博士、病院は?』
「今日は日曜日じゃからのう・・・新出先生はどうじゃろうか!」
「さっきかけたが留守だったぜ」
『なら、杯戸町の東都デパートは?あそこは木曜日が休診のはずだから』
と、言うことで博士のビートルで行くことになったが・・
『なんで私も?』
後部座席に座る空瑠は灰原に膝枕しながら溜息を吐いた。
「オメー暇だったんだろ?」
コナンが振り返り聞いてきたため空瑠は肯定の返事をして窓の方に視線を向け
『(何か・・嫌な予感がするんだよな・・・)』
スッと細められた瞳は窓に付いている水滴を見つめていた。
デパートの駐車場についた空瑠たちはレストラン街の卵粥を食べに行こうということになった。
しかし灰原が車から降りて見たものは・・ポルシェ356Aである。
『哀?』
慌ててその車に近づく灰原に空瑠も追いつくが
『哀、落ち着きな。確かにジンのと同じ型だけどこれは色が緑、別の持ち主の物さ』
話していれば駐車場に入ってくるもう一台のポルシェ。
横一列に並んだ4台のポルシェにコナンが興味深げに質問を始めた。
ポルシェの持ち主3人が去っていきコナンたちも移動しようとするが灰原は車に残ると言い出した。
『なら、私も残るよ。放っておけないし、何か、があるといけないからさ』
肩を竦めて言う空瑠の言葉を理解したコナンは頷くと博士と共にデパートに向かった。
「ごめんなさい・・」
『ん?』
助手席に座り携帯を弄っていた空瑠に後ろから聞こえてきた謝罪の言葉にミラー越しに視線を合わせた。
「迷惑かけて・・」
『誰かに尾行されるって事の恐怖は拭えない。それに、哀の場合は特に奴らを恐れているんだから外に出たくない気持ちもわかるよ』
淡々と答える空瑠に灰原は目を細めて空瑠の背中を見つめた。
「(どうして・・こんなに空瑠さんは強いのかしら・・彼女はジンと対決だってしているのに・・)」
『守られてな』
「!っ」
言葉にしていない気持ちを気付かれて息を詰める灰原に空瑠は
『生きてる限り守るよ。傍を、離れる事もしない。だから、今はお休み』
そっと撫でられた頭と軽く倒される感覚に灰原は抗わず後部シートに倒れこみ目を閉じた。
聞こえてきた寝息にホッと息をつくと空瑠も腕を組んで軽い眠りに就くため目を閉じた。
勿論足音や気配で目が開けられるくらい浅い眠りに。