翡翠とアメジスト2
□悪意と聖者の行進
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空瑠はあれから胸の痛みや動悸も治まりこれ以上赤井と共に居るところをザンシアや組織にバレるわけにはいかないと考え工藤邸に戻ってきた。
赤井は渋々それを了承したがそれでもこまめに連絡はするようになっている。
そして空瑠の携帯に電話が掛かってきたのは休日の朝のことだった。
「今日、依頼入っているか?」
珍しく電話してきたのは瑠希であり
『wingsの方で集まりありましたっけ?』
瑠希からの電話イコール招集と思っていた空瑠は首を傾げながら問えばその返事はなんとも曖昧なものでありとりあえず依頼がないこととを言えば
「探偵として力を貸して欲しい」
結局依頼であった。
「今日行われるパレード知ってるか?」
『東京スピリッツの優勝パレードですよね?』
空瑠はその言葉からパソコンを点けパレードのコースをチェックした。
「厄介なFAXが警視庁に送られてきたんだ」
『FAX?』
空瑠もその単語に話を聞くべくキーボードから指を離し会話の集中した。
「FAXの内容はこうだ“今日行われる東京スピリッツ優勝パレードで面白い事が起こる”とな」
『面白いことですか』
「あぁ・・それもあって俺たち1課は動くことになってる」
『それで、私にどうしろと?』
「こっちに来てくれないか?」
『?パレードの会場に?』
「あぁ・・俺の方でも警戒はしてみるが具体的なものがないと何とも言えなくてな・・」
『私が行っても同じでは?』
「いや、探偵として、刹那さんと瑠維さんの娘として来て欲しい」
『・・・』
両親の名を出されては空瑠も断れず現地集合ということで了承しもう一度モニターに映っているパレードのコースを見ると支度を始め家を出た。
既に始まっているパレードのコースに沿って歩いていき不審物及び不審者の捜索に当たるが・・・
『多すぎて見切れない・・』
前の世界でもこういう所での捜査はした事があったが
『あの時は爆弾だって分かってたから警戒できたけど・・面白いことって抽象過ぎるとな・・』
溜息を吐き前髪をかきあげながら歩みを進めれば道路に止まるミニパトとその近くにいる変装した瑠希の姿を見つけた。
『お疲れ様です』
瑠希の隣に並び聞こえる音量で喋れば僅かに顔を向けてまた前を見据え
「悪いな」
一言謝罪が来た。
『流石にこれだけ人が多いとさがすのにも限度があります』
「だよな」
溜息を吐く瑠希とふとミニパトから覗いてくる由美の姿。
「ねぇ、その子って今話題の女性名探偵だよね?瑠希くん知り合い?」
「何度か事件現場でな。まぁ、今回は俺が依頼したが」
『初めましてでしょうか?白夜空瑠です』
「交通課の宮本由美よ。よろしくね」
笑顔を向けてくる由美に空瑠はお辞儀をしてまたパレードの方に視線を向けようとしたが聞き覚えのある声が後ろから聞こえ振り返ればお馴染み少年探偵団が女性に怒られていた。
その女性はウィッグを外し素顔を晒し女性が佐藤だと分かると空瑠は首を傾げながら瑠希に問うた。
『1課は全員変装してるんですか?』
「いや、警部から言われている奴だけだ。現にここにいるのは俺と佐藤、後は白鳥だな」
『その格好ですと普通の青年ですね』
瑠希の姿を上から下まで見た空瑠の感想はそれだった。
「悠の意見参考にしたからな」
『あぁ。悠さん喫茶店のウエイターですもんね』
「このくらいの方がこの場には馴染んでるからな」
何故か白鳥まで合流し一緒にいた博士に白鳥は警視庁に送られてきたFAXの内容を話していた。