蒼と翡翠の想い
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そして工藤夫妻に引き取られることになった空瑠は白夜の名前は消したくないと思っていたが
「空瑠は元々国籍が選べるんだよ。アメリカか日本か。だから日本にいる間は工藤を名乗りなさい。アメリカに出るときは自身の白夜を名乗ると良い」
『そんなことが出来るんですか?』
「まぁ、ちょこちょこっと戸籍を弄ればね」
茶目っ気たっぷりにウインクする優作に空瑠はふふっと笑みを零した。
そして優作、有希子は空瑠の状態を把握しまずは改善出来るように努力していくことを決めていた。
日本に来た空瑠はまずは日本語の練習などから始まり小学校も編入した。
しかし改善はそうそう出来るものではなく不眠症もなかなか治らないため必然的に睡眠時間が足りず空瑠は学校でも意識を失うことがしばしば起きるようになっていた。
流石に不安を感じた工藤夫妻は病院に連れていき改めて事の深刻さを知ったが空瑠自身が諦めていないため薬を処方されながらなんとか眠る事はしようとしていた。
人間恐怖症や対人恐怖症も時たま現れるくらいにまで改善されてきたのが5年後・・
庭で空を見ていた空瑠に
「空瑠ちゃん!朗報なのよ!」
ニコニコと笑う有希子に空瑠は首を傾げた。
「実はね、空瑠ちゃんお姉ちゃんになるのよ」
いまいちピンと来ない空瑠は瞬きを繰り返すが
『それって・・いいの?』
「どうして?」
『だって、私は引き取られた子だから血の繋がりないし・・』
家族だが、家族でないことに空瑠は何処か不安を感じていた。
「馬鹿ね。そんなこと気にしないの。確かに容姿は私たちに似てないけど、仕草や表情は私や優作に似てきたわよ?」
ウインクする有希子に空瑠はホッとし
『私、お姉ちゃんになれるかな?』
未だ自身も病院に掛かりながら薬を飲み続けている空瑠は自分のことを弱いと思っているためそのことが自分が姉になることを妨げる要因にもなっていた。
「大丈夫。なれるわよ。だって、空瑠ちゃんのその顔はもうお姉さんの顔だもの」
ニコニコと笑う有希子に空瑠も嬉しそうに笑みを浮かべた。
「空瑠も大分落ち着いてきたな。最近は錯乱状態になることも減ったが・・まだ暗闇は怖いようだな」
窓から親子の様子を見ていた優作は持ち前の観察力を活かして様子を分析していた。
「有希子の妊娠が空瑠の不安を助長しなければいいが・・」
そのことが気がかりな優作は時折渋い顔をしていた。