蒼と翡翠の想い
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マリとの同居と言うかホームステイが始まって早10日。
空瑠はリハビリという名目で買い物に来ていた。
『(動きにくさは多少解消されたんだろうけど・・それでもまだ違和感はあるし、何より麻痺による感覚が変な感じ・・)』
空瑠は自身の腕に目を向けながら内心で呟いていた。
{「これ、先に商品だ」}
{『ありがとうございます』}
商品の入った袋を右手で受け取るとそれを左手に持ち帰るがその時も目で確かめながら慎重に行わないと力が足りず落とすことや逆に力が強すぎて潰してしまう事があるからである。
『(このくらいの力なら大丈夫かな)』
感覚が鈍っていることもあって目視で確認しながら行わないと未だ出来ないくらいで
『(普通には程遠いな)はぁ・・』
{「溜息は幸せが逃げるぞ?」}
{『あぁ、すみません』}
店主にお金を渡し空瑠は後ろ手に手を振りながらお店を後にした。
『あの店主が何も言わないのは優しさか、気がついてないからなのか・・』
どこか自嘲気味に言う空瑠はもう一度軽く息を吐いてから次の店に向かおうとしたが
‘ガッ’
『っ!』
急に腕を掴まれ咄嗟の事に対応が出来ず、掴まれたのが左腕である為持っていた荷物は全て道路に落ちてしまったが
{「下手に動くな。一緒に来い」}
男の声に従わざるを得ず無理やり引っ張って行かれたかと思えば一台のバンが停まっておりその後部扉が開いたかと思えば押し込まれるように乗せられ
『っ!』
中にも一人待機していたのか空瑠が体制を整える前に両腕を後ろで組まされ身動きができないようにがっちりと固められた。
『(強い・・)』
{「出せ」}
空瑠を捕らえた男はそれだけ命じそれと同時に閉まるドアと走り出す車。
『(随分手荒・・まるで自分たちの顔がバレても問題ないと言わんばかりの行動。それに、それぞれ武装は手に持つ中の他にホルスターに2丁、随分な武装だ)』
空瑠は見える限り視界に入れ自分なりに推理を展開していく。
{「にしてもこの女は今までの女よりも上玉だな。いっそ今ここでヤっても・・」}
{「未練があるなら俺たちのことに加わらなくていい」}
{「別にそんなんじゃねぇけどよ。こんな上玉を前にして何もしねぇって男が廃るだろ?」}
そう言いながら連れてきた男は空瑠の事を舐めるように見つめ
『っ!』
あろう事か空瑠の胸を揉んできたが
『(痛み以外は感覚があるんだけど・・)』
空瑠は強ばりそうになる体を抑え表情さえ変えずそれよりも今話していた男たちの会話が気になっていた。
『(今までの女って事は、捕まったのは私以外にもいるってことか。となると厄介だな。一人ならどうにでもなるけど人質取られたらアウトだし・・それよりも“未練”って言葉が気になる・・まさか!テロ!?)』
表情を変えないまま空瑠は自分の中で出た結論に舌打ちをしたくなった。