蒼と翡翠の想い

□7
1ページ/3ページ

あのテロ紛いの事があってから既に2週間、空瑠の両手も当時の包帯ぐるぐる巻きは大分無くなり今ではテーピング固定だけとなっていた。

{「空瑠は痛みを感じないからストップのかけ方がイマイチわからないのよね」}

マリの嘆きに空瑠は苦笑いである。リハビリも再開し左腕も少しずつ動かしづらさは解消していた。

{「どう?そろそろリハビリがてらやってみない?」}

マリが勧めるのはリハビリ目的行う喫茶店の店員。

一応この店もマリが切り盛りしているが大半は空瑠のようにリハビリ目的の人が行なっている。

{『わかった』}

名は知れていないが味が美味しいと密かに噂は流れているが大賑わいするほどではないためリハビリには丁度良いらしい。

空瑠が主に接客や提供など一通りを行いマリはその様子を観察し空瑠の手の具合を確認し時々手伝う程度。

{「空瑠も腕の動きは大分スムーズになったわね」}

観察していたマリの呟きに

{『それ、身内贔屓目でしょ?』}

空瑠はそれを真に受け取らず受け流していた。

{「もうっ。私はそういうことはしないわよ!」}

{『さて、どうだったかな?』}

クスリと笑う空瑠にマリは肩を竦めるだけだった。

そして・・

‘カラン’

ドアベルが音を立て来客を知らせるそれに

{『いらっしゃいませ・・えっ?』}

来店してきた客に空瑠は驚きの声を上げた。

と、言うのも

「えっ?空瑠が経営してるの?」

「ほー」

まさかのFBI捜査官二人だった。

『うそー』

空瑠は嘆くように項垂れ

{『マリ、私裏にいていい?』}

{「ダメに決まってるでしょ。せっかく対象が来たんだから」}

{『対象って・・』}

{「空瑠が私の判断を身内贔屓と言うなら第三者に判断してもらいなさい」}

{『えー』}

{「あの・・私たち来たらまずかったかしら?」}

客はジョディ達しか居らずジョディは空瑠とマリの会話に不安がるが

{「違う違う。ちょっとお願いがあってね」}

{「「お願い?」」}

赤井とジョディはそれぞれカウンターに座ると顔を見合わせた。

{「空瑠、働き始めたばかりでまだまだ不慣れだって言うのよ。私からしたらそんなことないように見えるだけどね?」}

意味ありげにニヤリと笑いながら空瑠に視線を向けるマリに空瑠は手元のカップを洗いながら呟いた。

{『マリは身内贔屓してるからって言ってるでしょ?』}

{「この通りなのよ。だから、あなたたちで見てくれないかしら?空瑠の作業の様子にどこかぎこちなさとか、変な動作がないか」}

{「そういうことなら私は構わないわ」}

{「あぁ、俺もいいが」}

{「良かった!じゃぁ、空瑠!私裏にいるから!」}

{『ちょっと・・マリ!』}

空瑠が声をかけるがそれより先にマリは裏に引っ込んでしまった。

『はぁ・・』

空瑠は思いっきり溜息を吐くと項垂れた。

「手は大丈夫なのか?」

赤井は話題を変えるように声を掛けた。

『えっ?あぁ、はい。今はテーピング固定だけになりましたから』
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ