蒼と翡翠の想い
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リハビリも順調な今日この頃・・
その夜に
『はぁ!?新一と蘭ちゃんがこっち(NY)に来る!?ちょっと何で!?』
空瑠の携帯に電話が来たのは夜のこと。
そしてその相手は
「だって〜無理だと思ってたチケットが取れたんだもん」
『チケット・・あぁ、もしかして今やってるミュージカル?』
「そう!空瑠ちゃんもどう?」
『行けないよ。母さんだってわかってるでしょ?私がここ(NY)にいる理由』
母親である有希子だった。
「でも、大分良いってマリは言ってるんでしょ?」
『そうだけど・・マリからどう聞いてるの?』
空瑠は溜息を吐き片手で頭を押さえた。
「動きは大分滑らかになったって聞いたわよ?」
『うん・・間違ってないけど・・麻痺がね。まぁ、利き手は右に直したしそうそう使わないと思うけど・・・蘭ちゃんは私がここにいる理由知らないでしょ?何か、知られるのはちょっとね』
「そう言えば蘭ちゃんは空瑠ちゃんに憧れてたわね」
納得したように言う有希子に空瑠は頷き
『だから、私はパスするよ』
「そういうことなら仕方ないわね。日本に戻る前にこっちにも顔を出してちょうだいね!」
そう言って電話は切れたのだった。
『はぁ・・』
空瑠は重たい溜息を吐くと携帯を耳から離し窓に視線を向けたのだった。
そして数日後ミュージカルを見に行くと言っていた当日、空瑠はリハビリも兼ねて今日も喫茶店で働いていた。
『はぁ・・』
「随分と溜息を吐いているな」
そしてカウンターに座るのは常連となり2日と間を空けずにやって来る赤井だった。
『そんなに吐いてました?』
空瑠が尋ねれば無言で頷かれその翡翠の瞳は真っ直ぐに空瑠を見つめていた。
「何かあったのか?」
首を傾げる赤井に空瑠は苦笑するしかなかったが
『弟が幼馴染を連れてこっち(NY)に来るんですよ』
「ほー?空瑠も弟が居るのか」
赤井の言い方に空瑠は首を傾げた。
『も?赤井さんもご兄弟が?』
「あぁ、弟と妹がな。妹はまだ未成年で今年16歳になるんだ」
フッと笑みを浮かべる赤井に空瑠は大切にしていることが伺えた。
『じゃぁ、私の弟と一緒ですね。私の弟も高校1年生ですから』
「そうか。意外な共通点だが、空瑠はそう考えると弟と同じくらいだな」
『私は今年で28歳ですよ?』
「あぁ、丁度それくらいだな」
年が離れていることに空瑠は驚くがそれを言ってしまえば自分たちもそうなのであえて言わないが・・
「弟が来ると何か困るのか?」
話を戻され空瑠は思い出したように
『ミュージカルを見に行くらしいんですよ』
赤井はその手の話に疎いのか首を傾げながら復唱した。