蒼と翡翠の想い
□13
1ページ/3ページ
空瑠は警視庁のデスクで淡々と仕事をこなしながらも以前工藤新一の名前が出たカラオケボックス殺人事件の調書にその名前がないかどうかを確認しあった場合にはさりげなくを装ってその名前を消すという作業を行っていた。
『流石にきつ・・』
パソコンを長時間見続けていた空瑠も漸く調書の書き換えが終わったところで片手で両目を抑えた。
「お疲れ様です。空瑠さん」
『美和子・・ありがとう』
部下である佐藤はそんな空瑠を労る様に1本の缶珈琲を渡し空瑠も礼を述べてからそのプルタブを引いた。
ふといつも電話した時に電話口から聞こえるプルタブを引く音を思い出し空瑠は一人小さく笑った。
「何か良い事でもあったんですか?」
『ん?』
「空瑠さんが笑ってるなんて珍しいですから」
『思い出し笑いかな。いつも缶珈琲を飲んでる人に注意しておきながら自分も飲んでるから』
「空瑠さんの想い人ですか?」
佐藤の何気ない一言に1課の男どもはこぞってその会話に聞き耳を立てた。
『さぁ、どうかな』
空瑠ははぐらかす様に珈琲を飲むがその口元には笑が浮かべられ
「教えてくださいよ〜」
絡んでくる佐藤をあしらいながら空瑠は次の案件の資料を読もうとすれば
‘ブーブー’
『ん?』
バイブ音からメールでない事に気がついた空瑠は携帯を開けば
『(父さん・・)』
ディスプレイに出ていた名前に一瞬目を見開くが空瑠は佐藤に断りを入れ誰もいない廊下までやってきた。
『もしもし?』
「あぁ、空瑠か。今、大丈夫かい?」
『うん。平気。けど、いつ呼ばれるかは分かんない』
「ははっ。相変わらず忙しそうだね」
『相変わらずって・・』
笑いながら言う優作に空瑠は肩を竦めるが
「まぁ、それはさておき・・阿笠博士から大体の事情は聞いたよ」
『うん。それなのにバカ弟は・・』
空瑠は片手で頭を押さえながらあった事を話せば
「ふむ。新一はどうやら危機感というものが足りないようだな」
『うん。私もそんな気がする』
「そこで空瑠、私と有希子は一芝居打とうと思うんだ」
『一芝居?』
「あぁ、どれだけ新一の危機感がないかをね」
どこか楽しそうに言う優作に空瑠は何をするのか何となく察し
『良いけど、私は多分参加できないよ?』
「日にちが決まったら少し手伝ってくれないか?」
『新一の行動予測とか?』
「あぁ、それは空瑠が得意だからな。あとは新一が解けそうな暗号の作成とか」
『それくらいならいいよ。計画が決まり次第教えて』
「あぁ、分かった」