蒼と翡翠の想い
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宮野明美が自殺として処理された事件から早10日。
空瑠はその事件を自ら担当すると申し出て自身の手で自殺として処理を下した。
しかし、空瑠の中で何かが崩れかけているのは確かであり10日間、家に帰るのは着替えとシャワーのみという状態で常に本庁にいる状態だった。
目暮は空瑠の状態を分かっていたが何も言わず逆に佐藤たちは心配で何度も声を掛けようとしたのを目暮に止められていた。
事件があれば現場へそれ以外は本庁に居り、夜勤や非番関係なく常にデスクに居り考えること、調べることは明美が残した烏のような組織と両親の事件。
『流石にそう簡単に出てくるわけないか』
一人パソコンでその組織について調べていたがもちろん手掛かりがある訳ではないためほぼ、空瑠の推理によって探るような状態。
『何かしら取っ掛りがあればいいけど・・』
冷え切った珈琲を飲みながら空瑠は呟き一旦頭を切り替えるために両親の事件のファイルを開いた。
『あれから20年あまり・・そろそろ時効になるんだよね・・』
溜息と共に視線は左手に向きそっと傷口を服の上から撫でた。
眠ることが出来ず常に脳はフル稼働したままの空瑠は目に見えている以上の疲労が体に蓄積されているが
『まだ、大丈夫かな』
怠く重い体を引き摺りながら事件現場へ向かうことに。
『それじゃ小林君、聴取お願い』
「はい。終わり次第空瑠警部の机に書類は置いておきます」
『ありがとう』
被疑者を乗せた車が空瑠の前を走り去り空瑠も本庁に戻ろうとしたが
『そう言えば・・千葉君の車できたんだっけ・・・』
部下である千葉が運転を引き受けたため空瑠は現場まで助手席に座っていたが千葉は別で聞き込みに行っているため空瑠は本庁に戻る足がなくなってしまった。
溜息を吐きながら空を見上げれば澄んだ色が広がり
『何やってんだろ・・』
疲れが滲み出ている声音で吐き出された言葉に覇気はなく空瑠は歩き出そうとすれば
‘プルルル’
『はい。空瑠です』
携帯のディスプレイには目暮の文字。
「あぁ、空瑠くんか。どうやら事件は解決したようだね」
『えぇ。今裏を取るために千葉君が聞き込みに行ってます』
「そうか・・ところで空瑠くんはまだ現場かね?」
『?えぇ、戻る足がないのでタクシーでも拾おうかと思っていますが・・』
「いや、今日はそのまま帰って構わんよ」
『・・・はい?』
目暮の言葉に空瑠は反応が遅れた。
『あの・・目暮警部?』
「小林君の聴取が終わった書類はわしの方で見ておくよ」
『あの・・』
「まぁ、早い話が休みなさいということさ」
『それはわかりましたが・・なぜ今なのでしょうか?』
「白鳥君に佐藤君からわしの方に空瑠くんを休ませてくれと何度も言われていてね。眠れないのは分かっているが、一度家に帰って体を休めなさい。明日も必要であれば休んでくれて構わんよ。これくらいの肩代わりはわしはいくらでもするからね」
『ですが・・』