番外編
□IF話
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黒の組織を壊滅させてから既に10日赤井を含めたFBIも本国であるアメリカに拠点を移し事後報告や残党の確保に追われていた。
それは公安である降谷も同じこと。
そして組織壊滅と共にコナンは工藤新一に戻り灰原も宮野志保に戻ったのだった。
そして、その組織壊滅に携わったもう一人、白夜空瑠はと言えば・・・
日本の工藤邸ではなく一件のマンション、それを見上げる長身のニット帽の男、赤井秀一はそのままエントランスを抜け目的の階に行くべくエレベータに乗り込んだ。
最上階に着くと懐から取り出した鍵で玄関を開けた。
「ただいま」
まさか赤井も自分がそんな台詞を言うとは思わず苦笑しながら上がり込んだ。
『おかえり。お疲れ様、秀一』
声だけ聞こえ赤井はその声のした方に向かえばそれはキッチンであり
『靴音と、この部屋に向かってくる気配がしたから分かってたよ』
スープの入った鍋をお玉でかき混ぜながら笑みを浮かべるのは赤井が愛した恋人である空瑠だった。
そして笑みを浮かべながらもアメジストの輝きは包帯によって遮られ今では見ることが叶わなくなっていた。
「空瑠は本当に気配に鋭いな」
苦笑しながら赤井は後ろから空瑠を抱きしめた。
『今は、気配と音が私の感覚だからね。後は臭いと味と触覚もか』
そっと抱きしめられる腕に抱きつくようにして空瑠は言うがその中で言われなかった視覚。
「あれから目の調子はどうだ」
そう、組織壊滅時に空瑠率いるwingsは奴らの深部まで入り込んでいたため奴らが使った閃光弾の光をまともに食らってしまい空瑠を含め数人は一時的な視覚障害になってしまった。
『病院にも通ってるけどまだ目処が立たないかな。まぁ、モロで受けちゃったから仕方ないよ』
視覚を奪われた空瑠だが、今まで培った技術が生かされているのか視覚を失っても平然と生活をする空瑠に病院の方が呆気にとられたのは記憶に新しい。
「そうか・・」
その言葉と一緒に抱きしめる力が強くなった事に空瑠は罪悪感があった。
あれは自分の責任であり他者を巻き込んでしまったことに空瑠はリーダーとして情けなさもあり自然と溜息が出てしまった。
「あまり気に病むな」
撫でられた頭に空瑠は赤井の方に顔を向けた。
「空瑠一人の責任ではない。それに、あの時空瑠が叫んでくれたからこそ、被害を最小限に抑えられたんだ」
組織を追い詰めるときいち早く投げられた物が閃光弾だと気がついた空瑠はその場でその事を叫び後ろから来ていたFBIや公安への被害を最小限に抑えたのだった。
『まぁ、そうなんだけどさ・・』
軽く肩を竦める空瑠に赤井は不意打ちでキスをした。
『っ!だから・・』
気配に鋭い空瑠でも急にそういうことをされると見えていた時以上に驚いてしまう。
勿論、それが分かっているから赤井はあまり不意打ちはしないようになったが・・
「聞き分けの悪い者へのお仕置きだ」
フッと笑みを浮かべながら指で唇をなぞられ空瑠は自分の顔に熱が集まるのを感じていた。