番外編

□初詣で
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‘コツコツコツ’

真夜中と言う暗闇の道を歩く足音が響き

『流石に冷える』

首に巻いたマフラーを口元まで引き上げ空瑠は白い息を吐き出した。

「確かに冷えますね」

沖矢は空瑠の隣を歩き同じく白い息を空へと吐き出し付けていた手袋を片方外すと空瑠の左手を掴んだ。

『!昴さん?』

掴まれたことに空瑠は首を傾げれば沖矢は空瑠の手袋を外し手を包み込む様に握るとそのまま自分のポケットに入れた。

冷気が手に当たり空瑠は一瞬身震いするが沖矢の体温に包まれた手がそのままポケットに入れられたのを見て瞬きした。

「慣れませんか?こういう事に」

『されたことが初めてだから・・前の世界では大体ポケットに入れてたし・・恋人事態、居なかったから・・』

空瑠はそう言ってポケットに入れられた手を握った。

「そうでしたね。でも、こうすると温かいでしょう?」

『うん。凄く』

空瑠は気恥ずかしさからマフラーに顔を埋めた。

『!鳴り出した』

空瑠の耳に聞こえた音に進行方向に顔を向け

「鐘の音・・ですか?」

アメリカではあまり馴染みのない鐘の音に沖矢は首を傾げた。

そう、空瑠と沖矢が向かっているのは米花神社への初詣で。

『除夜の鐘・・新年を迎える前から鳴り出して108回。煩悩の数だけって言うけどね』

だんだん大きく聞こえてくる除夜の鐘に空瑠は沖矢に説明した。

「ほー。日本だとこうなんだな」

『アメリカだとパレードとか?』

「まぁ、そう言う場合が多いな」

『へぇ。それはそれでちょっと見てみたかったかな』

空瑠はクスリと笑みを零し

「いつか、行ってみるか?」

『そうだね』

鳥居を潜れば見えてくるのは何段あるのかという長い階段を目の前にし沖矢は一瞬足を止めた。

『なかなか神社とかは来る機会が無いからね』

空瑠は沖矢が止まったのに合わせ一緒に立ち止まるが促す様に足を進め階段を上り始める。

階段の両端には提燈が吊るされており階段を照らしていた。

「これは一体何に並んでいるんだ?」

階段を登り切った先ではお参りする人が列をなしており沖矢は赤井の口調に戻るほど動揺していた。

『昴さんはこういうお参りは来た事ない?』

「そうだな・・無いな」

空瑠は興味深げに辺りを見渡す赤井にクスリと笑みを零し列に並ぶ前に

『あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします』

「こちらこそよろしくお願いします。破魔矢ですか?お守りですか?」

テントで御守りや破魔矢を売っている人に挨拶し空瑠は破魔矢を一本購入した。

そしてお参りするため列に並び沖矢もその隣に並ぶが

「知り合いだったのか?」

『ん?』

「今、挨拶していただろう?」

『あぁ。知り合いではないかな。毎年ここで買ってるから顔見知りではあるかもしれないけど』

空瑠はそう言って破魔矢を見せた。

「そうか」

『毎年新一と蘭の3人で来るのが通例だったからね』

空瑠は苦笑したように言い財布から5円玉を取り出した。

『あ、5円玉持ってる?』

「?ちょっと待ってくれ」
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