10万hit記念リクエスト小説
□後継者
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黒の組織を壊滅させたのがもう何年も前の事。
そして空瑠が高校を卒業し赤井にプロポーズされ結婚したのがこれまた何年も前の事。
変わらず探偵を続ける空瑠と同じくFBI捜査官を続ける赤井。
確実に年は取っているはずだが・・
何故か二人はそれを感じさせずバリバリ現役で働いている。
そして、一人息子である龍一は今年で高校生になり探偵としての血が騒ぎだしたのか最近は龍一が警察に頼まれて事件を解決することもある。
「ただいま」
夜もだいぶ遅い時間、息子の龍一が帰宅すれば
「遅かったな、龍一。お帰り」
リビングでは赤井が仕事で持って帰って来たのか資料を広げていた。
「父さんがこの時間に居ることに驚いた」
「言う事がまずそれなのか?」
純粋に驚き瞬きしながら呟く龍一に赤井は視線だけ龍一に向けた。
「ごめん。ただいま、父さん」
苦笑しながら挨拶する龍一に
「あぁ。お帰り」
赤井は鋭い視線を緩め挨拶を返した。
「あれ?母さんは?」
辺りを見渡すが空瑠の姿がないことに龍一は首を傾げれば
「依頼人と話し中だ」
そう言って空瑠の仕事部屋の方を顎で示した。
「えっ?母さんまた依頼?」
探偵としての腕がいい事とその認知度が高いことを龍一も知っていたがつい先日も依頼で家を空けていたはずと驚きの声を上げれば
「依頼完了の報告だそうだ」
そう言って赤井は広げていた資料を片し
「珈琲を淹れるが飲むか?」
「あ、飲む。着替えて来るよ」
「あぁ」
龍一は自分の部屋へ行き赤井はキッチンに向かった。
‘コトッ’
向かいのソファに龍一が座ればその前に置かれる珈琲の入ったマグ。
「で?こんな遅くまでお前は何をしていたんだ?」
夜遊びなら許さないと赤井は目を細めて言えば龍一は持っていたマグを置き
「夜遊びじゃねぇよ!事件解決してたんだ!今起きてる連続殺人事件で知恵を貸してくれって警察から頼まれたから」
必死に抗議する龍一に赤井は瞬きをして
「今朝の新聞に載っていたダイイングメッセージの事か?」
「そう!俺も最近探偵として推理が出来る様になったから警察の人にも頼られるようになったんだ」
嬉しそうに話す龍一に赤井は珈琲を啜ると
「水を差すようで悪いが・・」
と断りを入れ
「その事件なら俺も空瑠も既に犯人は分かっていたさ」
「えっ?」
赤井の言葉に驚き口を開けたまま瞬きを繰り返す龍一に
「俺の方にも資料が来たからな。だが、空瑠は今朝の新聞を見ただけで分かったようだ。逆さ文字かと呟いていたからな」
そう言って赤井はまた珈琲を啜っていれば
‘ガチャッ’
「本当に腕の立つ探偵さんで嬉しいわ。あ、依頼料は振り込んだから。また何かあったらお願いね。オホホ」
そう言って上機嫌で出て行く依頼人。
『はぁ・・』
空瑠は重たい溜息を吐くと仕事部屋から空のカップを持ってキッチンに向かいひょっこりリビングを覗けば
『あ、龍一お帰り』
「ただいま。母さん」
『ご飯食べた?何か作る?』
「ちょっと食べたい」
『分かった。希望は?』
「ハムサンド」
『了解』
龍一の希望にクスリと笑みを零した空瑠はまたキッチンに戻りハムサンドを作り始めた。