翡翠とアメジスト
□6年後
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高校入学する前、工藤夫妻はハワイで射的もやらせてくれたため空瑠は転生してからの力が衰えていないことを悟った。
「すげーな。空瑠。父さんの指導殆どなしかよ」
的の真ん中を打ち抜かれているのを見て新一は感嘆の声を上げた。
『私は両親にも習ってたから』
特にそのことを驕る事もせず空瑠は的を見据えていた。
「空瑠、ライフルはやったことあるのかい?」
優作に言われ空瑠は頷いた。前の世界でという事は心の中で付け足して。
ライフルに関しても特に優作からの指導はなく空瑠はその施設の限界である800ヤードでも真ん中を打ち抜いた。
「すっげぇ・・」
最早唖然として新一は開いた口が塞がらない状態だった。
勿論それを撃った張本人の空瑠は
『(前の世界ではこれが当たり前だった。それに、この世界でも計算を頭でするんじゃない、感じるんだ。だから私は自分の感覚を信じるだけ)』
新しく出た的に自分が感じた感覚を信じて引き金を引く。
何度やってもそれがぶれる事はなく
「空瑠、これ以上はやりようがないが、どうする?私の知り合いがロスで米軍の狙撃兵をやっているんだが、ここ以上の距離をやることができるぞ?」
『そうですね・・もし、ロスに行く機会があったら一度お願いしてもいいですか?』
空瑠の言葉に優作は頷いた。
「オメーほんと何でもできるな」
空瑠の横に並んで新一は呟いた。
『新一も銃の腕は悪くないと思うけど?』
空瑠は持っていたライフルを片付ける前に整備するべく足を速めた。
「ってか、あいつほんと抑揚のない声だな」
優作と話しながらもライフルや銃の整備を行う空瑠の声を聞いて新一は呟いた。
「新ちゃん!空瑠ちゃん!次はこっちよ!」
有希子の声が外から聞こえ新一は先に入口のほうに向かった。
「ジャガーってことは・・・」
入口の前に止められているジャガー・Eタイプに新一は頬を引きつらせた。
『新一?どうかした?・・あぁ』
射撃場を出てきた空瑠は新一が固まっていることに声を掛けたが目の前に止まっている車を見て納得した。
「母さん・・マジかよ・・」
「そりゃもっちろん!」
ニコニコと楽しそうに笑う有希子と項垂れる新一の二極化に空瑠は苦笑しながら肩を竦めた。
「はははっ有希子は本当にこれが好きだからな」
笑いながら新一の肩を叩く優作も顔には面白そうと書いてある。
『先、やってもいい?』
新一に問いかければ項垂れたままひらひらと手を振られたため空瑠はそのまま歩みを進め
『有希子さん先、やります』
「やったーー!じゃぁ、私は助手席に乗るわね」
ニコニコと助手席に乗る有希子に空瑠も運転席に座り
『(久しぶりだな運転自体・・まぁ、射撃の腕や刑事の勘、暗殺者の頃の気配なんかは変わってないところを見ると問題ないだろうけど)』