翡翠とアメジスト

□両親のことを調べよう
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そして金曜日の夕方、空瑠はボストン一つ片手に空港に立っていた。

『14時間のフライトか・・懐かしいな』

ふと昔を思い出し空瑠は足取り軽くゲートを潜った。






ロスの空港に着けば有希子が来るまで迎えに来ていた。

「空瑠ちゃんいらっしゃい!」

『すみません、わざわざ迎えに来てもらって』

「全然構わないわ!それと、家に着いたら空瑠ちゃんに見せたいものがあるのよ!」

『見せたいものですか?』

助手席に座った空瑠は有希子の言葉に首を傾げたが内容までは教えてもらえず窓の外に視線を移した。

「懐かしいかしら?」

『そうですね。6年は随分長く感じますね』

変わっている景色に空瑠はそれでも口元の笑は変わらなかった。

「空瑠、よく来たね」

ロスの家に着けば出迎えてくれる優作に空瑠は頭を下げた。

ボストンバックを家に入れると

「こっちよ」

何故かガレージの方に案内された。

『これって・・』

シートのかかっているそれは間違いなくバイクであり

「瑠維から預かっていたものだよ」

『!?』

バイクを見ていた空瑠は後ろからかけられた声に振り返れば優しい笑みを浮かべて優作が見ていた。

「空瑠には必要になる物だ。瑠維はそう言って私に預けたんだ」

『父さんも・・かなり先読みをしていましたね』

感嘆の息しか出ない空瑠は少し照れくさそうに笑った。

「これから、行く所があるんだろう?」

優作の言葉に今回の目的を思い出し鍵を受け取るとそのまま家を出ていった。

バイクに乗ること2時間。

ある一軒家にやってきた。

一軒家といってもかなり大きい家だが。

バイクを門の前で止め、門を開け中に入るとまずは地面の土の状態を確認した。

『足跡なし、踏み固められた様子もない。奴らもここまではたどり着かなかったということか?』

とりあえずバイクを押して庭に入りぐるりと家の周りを見つめ大きな木の前で止まり

枝の具合を確かめてから勢いを付け飛び上がるとその枝を利用して二階のベランダに着地。

『やっぱり』

そこだけ鍵が閉められておらず開けられるようになっているが・・・

『よっと』

空瑠はその窓を横ではなく上へ持ち上げた。

そうするとわずかに隙間ができそこから中へ入った。

この家は用心を考えた父が建てた別荘であり、至る所に仕掛けが施され空瑠は一度来た時にそれを全て覚えた。

盗聴器や発信機の類がないかをチェックし無いことが分かるとそのまま父の部屋に向かった。

読書が好きだった父の部屋は書斎と変わらないくらい本が有り空瑠は迷うことなく一冊を抜き取った。

そしてそれを開けると本ではなく本に似せた箱になっており中には鍵が入っていた。

今度はその鍵を持って書斎へ。

書斎にある暖炉の横壁には煤で見づらいが鍵穴が有り迷うことなくそこに鍵を挿せば

‘カチャリッ’

鍵が回る音がし暖炉の床が横へスライドし階段が出てくる。

1階部分に相当するが、これが秘密部屋である。

‘コツコツコツ’

階段をゆっくり降りていけば勝手に閉まる暖炉の床。

一つの扉に辿り着きそこを開ければ一台のパソコンが置いてある。

『・・・』

電源を点けずに空瑠は覚えている長ったらしいパスワードをキーボードに打ち込んだ。
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