翡翠とアメジスト

□wingsに会う
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高校に上がる頃には新一は高校生探偵となり新聞やテレビを賑わせるようになっていた。

そして

『え?ロスに戻られるんですか?』

「そうなのよ」

「空瑠はどうするかね?」

『・・・やめておきます。まぁ、夏休みとかで行けたら行こうと思ってますから』

「そうか」

今日も新一は目暮警部に事件だと言われ、ついて行っているため工藤邸にはいない。

「そう言えばwingsのメンバーには会えたのかい?」

『いえ、明日父の右腕と言われていた方と会います。一応一通りのプロフィールは読んだんですが』

「そうか・・私たちも明日日本を発つんだ」

『新一がうるさそうですね』

呆れたように肩を竦める空瑠に優作、有希子も困ったような笑みを浮かべた。

「そう言えば、今新一が追っている事件、空瑠は分かったのかい?」

ふと話題転換とばかりに優作が聞いてきたため空瑠は今朝読んだ新聞の記事を思い出しながらカップに口をつけた。

『犯人は被害者の弟さんですよね?』

「おや、わかってたんだね」

『えぇ・・新聞を読んだ時に。まぁ、そんな難しい事件じゃないと思いますしそろそろ・・

「ただいまー」

噂をすれば何とやらですね』

パタパタと有希子は玄関に掛けて行き空瑠と優作はリビングで優雅に過ごしていた。

そして事件の話を自慢気に話す新一だが、優作も空瑠も既に知っていたことを有希子が言えばムスっとした顔で部屋に行ってしまった。

『やれやれ・・』

空瑠は持っていたカップを置きソファを立ち上がると新一の部屋に向かった。

‘コンコン’

ノックをしても返事がないため空瑠は溜息を吐きながら扉を開けた。

「返事してねーぞ」

『する気がなかったくせに』

ベッドに寝転ぶ新一は天井を向いたまま拗ねた声で言ったため空瑠も呆れながら部屋に入った。

「空瑠は探偵名乗らねぇのか?」

壁に寄りかかるようにして窓の外を見ていた空瑠に新一は投げかけた。

『名乗る気はないよ』

「何でだ?」

新一はやっと起き上がると空瑠の方を向いた。

『そうだね・・強いて言えば新一の助手の方が向いてるからかな』

空瑠も視線を合わせるように新一の方を向いた。

「俺の助手?」

『まぁ、気が向いたらね。私はあまり目立たないほうがいいだろうからさ』

そう言って腕を組む空瑠に新一は空瑠の腕にある弾痕や手術痕を思い出した。

「そうだよな・・」

『真実が見たいなら、事件を解決することを遊びのように考えるのはやめな』

「!」

空瑠の声や雰囲気が変わり新一は目を見開いた。

『そこにある真実がどんなものかわからない。新一は事件を解決することが快感?』

「いや・・そうじゃねぇけど・・・」

『まぁ、探偵でもない私がこんなこというのはお門違いだけど、自分より先に誰かがそれを解決していた。そこに悔しさを感じるのは間違いだってこと』

空瑠はそれだけ言うと部屋を出て行った。

行き違うように部屋に優作が入ってきてどうやら親子でなにか話し合うようで空瑠は扉からそっと離れた。

『らしくないことをしたな・・』

自分の部屋に戻りベッドに腰を下ろしながら溜息を吐いた。
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