翡翠とアメジスト
□夏休みをロスで
1ページ/3ページ
高校も夏休みに入り空瑠はロスの家に来ていた。
『じゃぁ、今日も行ってきます』
「行ってらっしゃい。空瑠ちゃん」
「イリネスによろしくな」
『はい』
何度かロスに来ている間にバイクと車の国際免許は取得済み。
ついでに一台バイクも購入した(工藤夫妻に買い与えられた)ものは日本の工藤邸に既に置いてある。そのためロスにいても日本に居ても空瑠の移動手段は専らバイクになった。
(時たまロスにいると有希子から車の運転をせがまれたりもする)
そして今日も空瑠はイリネスの待つ射撃場へ。
{「よう!空瑠!来たか!」}
{『お久しぶりですイリネスさん』}
{「今日は空瑠が先だったな」}
{『あぁ・・赤井さんですか』}
空瑠も赤井もこの射撃場に足を運ぶため会うことがある。
{「まぁ、今日は早撃ち、やってみろ」}
そう言って後ろ手に指された方には多種多様の拳銃が置いてある。
デザートイーグルは早打ちには向かないと空瑠自身感じていたため丁度良かった。
頷いて銃を見ていればふと目に付いた銃があった。
H&K USP40である。
{「お前さんはその手の銃に惹かれるらしいな。PSG-1といい」}
イリネスは空瑠が手にした銃を見て呟いた。
{「始めるぞ!」}
イリネスの声が響き空瑠はそれを構え目を瞑る。
出てきた的の速さを確認しそれに合わせて引き金を引く。
的の速さが早くなろうと空瑠は余裕でついていけている
『(この程度なら前の世界で受けた訓練よりも優しい)』
そんなことを考える余裕はあるらしい。
{「参った・・最高スピードでも余裕か!俺のいる狙撃部隊でもここまで正確に撃てる奴はいない。流石優作の見込んだやつだな!」}
嬉しそうに肩を組んでくるイリネスに空瑠は溜息を吐いてその空気に身を任せた。
一応使ったものとして整備をしていれば
{「しっかし・・別嬪さんになったな」}
その言葉で空瑠は動きを止めた。
{「お前さんが覚えてねぇのも無理はない」}
その言葉で空瑠は思い出した。
{『もしかしてあの事件で上司に突っかかっていたのが・・』}
{「あぁ、俺さ。まぁ、歯向かったって事でクビになったがな」}
ニヤリと笑ったイリネスに空瑠は肩を竦めた。
{『既に狙撃部隊に勧誘されていたからですか?』}
{「おっ!良い読みしてるぜ!」}
嬉しそうに言うイリネスを無視して再び整備に没頭した。
{「その銃は空瑠にやるよ」}
整備の終わった銃を確認していればイリネスの声に空瑠は耳を疑った。
{「前に言ったろ?銃は選ぶんじゃない、選ばれるものだったて。空瑠はその銃に選ばれた。それが証拠だ。他の奴がそれを手にとったところで空瑠以上に扱えるやつはいない」}
{『・・・』}
手の中にある銃に視線を移し空瑠は考えるがイリネスの言い分は最もだと思った。
この手で銃を掴んだ時に何かを感じた。
まるで自分を選び使いこなせというように・・
だから空瑠もそれに答えるように頷いた。
{『使う機会がないことを祈りながら大事にするよ』}
肩を竦め懐にしまったところで空瑠はイリネスに向かい合った。