翡翠とアメジスト

□園子のアブない夏物語
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いつも通り学校帰りに目暮警部に呼び出され事件を解決した空瑠だが・・

『はぁ・・園子からあんな話を聞いたせいで事件の方に集中できなかった・・』

こんなに時間がかかる事件ではなかったはずなのだが・・

上手く頭が回らず真相にたどり着くまでに時間がかかったのだ。

携帯で時間を確かめれば一通のメールが受信されており

『赤井さんだ』

恋人という関係になってから空瑠はあまり連絡をしないようにしているが赤井からは時間があるときはこうしてメールや電話が来るのであった。

『この時間だと丁度事件現場に居たから携帯見てなかったんだ』

とりあえず折り返しで電話をすれば

「空瑠か?」

『お疲れ様です。メール見れなくてすみません』

「あぁ。大丈夫だ。今は時間があるのか?」

『はい。この後特には』

電話の向こうで赤井が同僚に呼ばれていたのが聞こえていた

「すまない。後30分ぐらいで終わるんだが夕飯でもどうかと思ってな」

『構いませんが』

「外は暑いだろう?どこか店に入っててくれ。その場所に向かう」

『分かりました。お疲れ様です』

「あぁ」

決して長いやりとりはせず要件だけ述べて空瑠は電話を切った。

とりあえず言われた通りどこか店に入ろうと辺りを見渡し

『ここならいいか』

通り沿いのカフェに入り一番窓側の席に腰を下ろした。

『はぁ・・』

無意識に出る溜息は最早どうしようもなかった。

とりあえず赤井に場所をメールしておいて鞄に入れていた本を読み出す。

元からミステリーは好んで読む傾向にあったため集中すると周りが見えなかったりもする。

‘コツコツ’

ふとテーブルを指で叩く音に本から視線を逸らせば目の前に赤井が立っていた。

携帯で時間を確認すれば1時間を過ぎたところであり空瑠は集中しすぎたと苦笑した。

『お疲れ様でした』

前の席を勧めればそのまま腰を下ろしてきた赤井だが

『あ・・髪、切られたんですか』

前に会った時はまだ長髪でニット帽を被っていたが今はその影もないくらい短くなり帽子も取られていた。

「あぁ、験直しにな」

首の辺りを触りながら赤井は肯定の返事をした。

「空瑠も最近は大変そうだな。ニュースで見たが」

『あぁ・・今日もさっきまで現場に居たんですよ』

苦笑交じりに溜息を吐く空瑠に

「だが、それだけ目立つのは大丈夫なのか?」

wingsとして動いている事を知っている赤井はそのことが気がかりだったが

『メンバーにも聞きましたが特に問題ないとのことなので』

「そうか」

どこかホッとした表情をする赤井に空瑠は申し訳なさがあった。

結局ここでご飯を食べることとなり各々注文を済ませると

『はぁ・・』

空瑠の頭には園子の言葉が無限ループしているようで思い出すと溜息が出た。

「恋人を前にして溜息を吐かれるのは些か傷つくな」

全くそう思っていない声で言われ

『すみません・・』

項垂れるように頭を抱える空瑠に赤井は首を傾げた。

「何かあったのか?」

『あったというか、これから起こるというか・・』

「とりあえず話してみろ、俺でいいならいくらでも聞いてやる」

そう言って頭を撫でられるが・・

正直に言えば赤井にも話していないためどうするかという問題であったが・・

元から言わなければとは思っていたことでありいい機会だと自分の中で納得させ空瑠は頭を上げた。
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