FBIと護り屋
□出会い編1
1ページ/2ページ
いつも通りの日常、ウィルは昼食を外で済ませそのついでに護り屋としての仕事、自分が探っている集団の足取りを追うため情報屋と言われるウィルの信頼がおける相手に頼みに行った帰りだった。
午後に1コマだけある講義はウィルを贔屓にしてくれる教授だがウィル自身もその教授の講義は結構好いているため真面目に聞いている。
『さて、その講義を聞いた後は“バイト”だな』
歩きながらいつも通りの平和な日常を謳歌するつもりだった。
‘キンッ’
折り畳みナイフの刃を出した音とずっと背後にある気配が動いたことをウィルの耳と全身の肌が感じていた。
『(どうしたもんかな・・)』
このままやられるつもりはない。
だが、ウィルの後ろから迫ってくる男とさらにその奥にもう一人、監視している男が居るのをウィルは振り向いた瞬間に捉えた。
振り向きざまに男のナイフを躱し
『っと・・へぇ・・まさか殺人犯さんが堂々と人殺しか』
ニヤリと笑ったウィルはそのまま流れる様にナイフを蹴り上げ
‘ドゴォッ’
回し蹴りで相手を沈めた。
『甘いな』
見下すように呟くその言葉は冷たさが響き
『すんません。誰でも良いんで警察呼んでもらえますか?殺人犯が道路で伸びてるって』
「呼んだか?」
ウィルが周りの人達にそう呼びかければ背後から声が聞こえた。
振り返れば真っ黒な服装にニット帽と腰まであるであろう長い黒髪と翡翠の瞳が特徴的な男。
「協力に感謝する。警察の者だ」
手帳こそ見せないものの雰囲気からそうだろうとウィルは思っていたが
『協力に感謝か・・白々しい言葉だな』
ウィルはその言葉に眉を寄せ吐き捨てるように言った。
「ほー?」
男はウィルの言葉に口の端を吊り上げて笑う。
『俺が何も出来ない一般人だったらすぐに間に入り込むつもりだったんだろうけど、俺がコイツの攻撃を躱したのを見てあんたは傍観することに決めた。違うか?』
「あの一瞬でそれに気が付いたのか。面白い」
一瞬とはウィルが背後を振り返ったその瞬間。
「事情聴取を行いたいんだが良いだろうか?」
男の言葉にウィルは溜息を吐き
『電話だけしてもいいですか?』
「あぁ」
‘プルルル’
「どしたー?」
『悪い警察に事情聴取されることになった。代返頼んでいい?』
「はぁ!?何したんだよ」
『ナイフ向けてきた相手を沈めた』
「おいおい・・どうせお前の事だから何かしらの罪人だったんだろ?」
『そ』
「OK終わり次第迎えに行くか?」
『そこまで掛からないはずだが・・なったら頼む』
「あーいよ」
『終わりましたので』
「あぁ。では一緒に来てくれ」
そう言って歩き出した男と丁度到着した数台のパトカーに男は何事かを呟くとウィルを車に乗せ隣に乗り込んだ。
『(ふーん・・赤井・・それがこの人の名前か。後は秀一・・赤井秀一。日本人か・・)』
周りから聞こえる男を呼ぶ声にウィルは納得し彼がFBI捜査官であることまで分かった。
そして連行されてきたのはFBI本部の一室。
「まずは名前と職業を聞かせてくれ」
『名前はルイ・シルフィード。職業は大学生』
「ルイ君か・・先ほどの電話で学生だとは思ったが・・」
『他には?』
「あの男が殺人犯だと知っていたのか?」
『3年くらい前じゃないかな。殺人犯して逃亡、新聞に載ってたはず。俺、記憶力良いらしいから』
ぞんざいにウィルは言い赤井はそれを紙に記入していく。