FBIと護り屋
□仕事編1
1ページ/4ページ
ウィルとケンの予想から3日目
『マジで居やがった』
廊下の窓から見えた大学の門の前には寄り掛かる様にして大学の中を見ている赤井の姿があり女子大生が黄色い声を上げていた。
『ケン』
教室に戻ったウィルはケンに声を掛け経緯を話せばケンは苦笑いしか出てこなかった。
「マジですげぇな」
『いい迷惑だ』
切り捨てるように言ったウィルにケンは同感だと言う様に頷き教室を出た。
「で?どうすんだ。このままアジトまで連れてく訳にはいかねぇだろ?」
『普通に歩いて途中で俺とケンで別れる。俺は路地に入りアイツが付いてきた場合は俺が撒く。ケンの方に言った場合はケンは普通に自宅に戻れ』
「俺も今日仕事だが?」
『まぁ、狙いは俺だと思うから問題ねぇと思うがな』
肩を竦めながら話すウィルにケンは了解の返事をし2人揃って大学を出た。
『マジでついてきやがった』
音で尾行されていることに気が付いたウィルはげんなりし
「んじゃ、あとでな」
ケンは路地が見えた所で片手を上げウィルは素早く路地に入った。
『仕事しなくていいのかよFBI捜査官さんよ』
苛立ちがピークに達したウィルは煙草のフィルターを嚙み切らんばかり噛み締め路地に入ってきた赤井を睨み付けた。
「よく俺だとわかったな」
飄々と答える赤井に
‘トントン’
ウィルは自分の左耳を叩いた。
『あんたの足音は一度聞いてるからわかんだよ。それも、前と同じようにかなり距離を置いて観察するようにな』
「ほー。足音だけで俺と判断するとは素晴らしいな」
『素晴らしいか・・・』
赤井から言われた言葉にウィルの中で怒りよりも諦めのような虚無感が襲った。
吸っていた煙草を灰皿に入れると踵を返し
『もう、俺に構わないでくれ』
その言葉は今までの棘のある言葉ではなくどこまでもどこまでも深い悲しみを含んだ声音だった。
「ルイ君?」
ウィルの態度の急変に赤井も気が付き名前を呼ぶがウィルは聞こえていながら聞こえていないふりをして路地を歩き続けた。
「ルイ!」
ウィルが路地を抜けそうになった時赤井はウィルの名を呼びながら走ったが赤井が路地を抜けた時・・
「居ないだと・・?」
たった数秒の間にウィルは姿を消した。
少なくとも、赤井の目に映らない場所には居た。
赤井がその場を去るのを確認すると
‘トンッ’
軽い着地音と共にウィルが姿を現す。
と、言うのもウィルが居たのは路地を抜けた先の看板の上に立っていた。
『こうでもしないと撒けないのは面倒だな』
呟きながらウィルは再び路地を戻りアジトに向かって歩き出した。
『素晴らしいか・・・何も知らない奴はお気楽だな』
自嘲気味に呟いた言葉にウィルは左眼を覆いながら歩みを進めた。
まさか、その後ろからつけられているとは思わずに。