FBIと護り屋
□日常編2
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赤井からほぼ無理やりな形で誘われたウィルは指定された喫茶店に行く前にその向かいの書店へと足を向けた。
『あ、新刊出てる』
ウィルは記憶力が良いのもあるが如何せん読書家な面があり部屋の一室を本で溢れかえらせるほど本が好きなのである。
更にミステリーを好んで読んでいたり贔屓にしている教授の書いた本は買っていたりもしている。
そして今日はウィルが愛読している作家の新刊が平積みになって書店の一角を占めていた。
新刊の他にも数冊目を引いた物を選びレジへと持って行く。
紙袋に入れられたハードカバーの本は意外に重くウィルはさっさと指定のカフェに入ると迷うことなく喫煙席に向かいガラス張りで日当りの良い一角に腰を下ろした。
携帯を確認すれば少々遅れると言うメールを受信しておりこれ幸いと言わんばかりにウィルは足を組んだ膝の上に本を置きテーブルの側面に立てかける様にして頬杖をつくと本の世界へとのめり込んで行った。
頬杖をつきながらもう片方の手で吸われる煙草に近くの席に座る人々は好意の眼差しでウィルを見ていた。
『(視線が気になる・・)』
勿論、本の世界に居てもウィルは視線や気配には敏感であり正直うざったい気持ちではあった。
『帰ろうかな・・』
「それは困るな」
別段困った風には見えず赤井はいつもの飄々とした表情でウィルの横に立っていた。
『最初に会った時と同じようだな』
ウィルが警察を呼んでくれと言ったあの時も赤井は飄々としていたのでウィルが呟く様に言った。
「待たせたことはすまない。ん?新刊か?」
ウィルの前の席に座った赤井はウィルが持っている本を見て首を傾げた。
『あんたも読むの?新刊で平積みされてたけど』
「あぁ。今日発売だったな・・」
買い損ねたと呟く赤井にウィルは読んでいた本を閉じ、殆ど灰になりかけている煙草を揉み消すと
『ん』
その本を赤井に差し出した。
「?」
勿論、いきなりされたその意味が分からず赤井は首を傾げ
『やる。俺は別に急がねぇし、あんたみたいに忙しくねぇから』
どの口がそれを言うのかと赤井は内心で思いながら苦笑し首を横に振った。
「別に今すぐじゃなくても買える時はある。気にしなくて良い。それに、まだ読み途中だろう?」
『なら良いけど』
そう言ってあっさりとウィルは本を引き戻すと紙袋にしまい赤井に視線を向けながら煙草に手を伸ばした。
「この間の協力には本当に感謝している。正直俺たちでは単独犯でないことくらいが関の山だったからな」