恋を知った
□休暇の翌日
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主人公side
泣くなんて思ってなかった。
赤井捜査官に抱きしめられたことも、側にいると言われたことも、嬉しかった。
でも、私は言えてないことが多すぎる。
私が・・殺し屋だったことを・・・過去に何人もの人を殺したことを・・・この手で、私は・・・幸せなんて手に入れてはいけない。
忘れてはいけない。
殺し屋だということを・・・何年たってもその事実は変わらない。
変えられない。
昨夜はあのあと赤井捜査官・・いや、赤井さんにマンションの前まで送ってもらった。
彼は不安ならば家に来るかと言ってくれたがその誘いを私は断った。
彼にはまだ見せられない。
傷だらけの私の体も、左眼も・・・瞳を閉じて気を落ち着かせ気を引き締めるように
‘ジャッ’
カーテンを開ければ明るい光が部屋に差し込む。
泣いたせいで若干まぶたが重く腫れていることがわかった。
『冷やしたんだけどな・・・』
瞼を触ってみてもその感覚は分からない。
いつもの黒のパンツに青いシャツ、黒のジャケット姿に着替えた私は朝食を取らずにそのまま家を出た。
途中のカフェでコーヒーとサンドイッチをテイクアウトしてそれを持って本部に行きそのままエレベーターで地下2階に向かう。
今日は特に捜査のことは言われていないから本部で書類整理のはず。
そんなことを確かめながら懐からデザートイーグルを取り出す。
わたしが使っているのはマグナムとこのデザートイーグル。
しかしこの銃は誰もが使えるわけではない。
元から重さもあり狙いにくい上に反動が大きく一般の人が使おうとすれば確実に肩が外れる代物。
‘ダンダンダン’
既に撃つ時の音が普通の銃と違う。
反動は確実に来ているのに私は撃ち続けた。
使ってはいけないと言われている左手で。
「空瑠〜?」
『!』
その声がした方を向けばとびっきりの笑顔で扉にもたれ掛かっている
『コーランドさん・・・』
「言いたはずだよなぁ?その銃使うときは左手で使うこと禁止って。下からお前が左利きなのは知っていたが・・・言ったよなぁ?」
『ご・・・ごめんなさい』
「ったく。何があったかは聞かないが、少しは左手を勞ってやれ。使い物にならなくなるぞ」
『・・・無意識に左手使ってた』
それでも確実に使った反動として左手は震えていた。
‘グシャグシャグシャ’
『わわっ』
いきなり頭を強く撫でられて思わず声を上げれば可笑しそうに笑うコーランドの声が聞こえた。
「あんまし、溜め込むな」
そのまま射撃場を去っていくコーランドを見て私は銃を懐にしまい荷物を持ってオフィスに向かう。
席についてサンドイッチを食べていれば
「地下(下)からデカイ音聞こえたが、イーグル使ったのか?」
背後から声を掛けられ特にそちらを向くわけでもなくサンドイッチを飲み込んでから
『・・・昔のことを思い出したらどうしようもなくて』
言い訳地味たことを言って最後の一口を飲み込んだ。
「まさか左手使ってないよな?」
『・・・』
図星であるため何も言えない
「おいおいおい・・・その瞼が腫れてる理由と関係あんのかよ」
『忘れそうになるのよ・・・私が殺し屋だったってことを』
「今更それを持ち出すのかよ」
『えぇ』
私はそう言って珈琲を飲み干した。
「早いんだな。空瑠、レイネス」
「秀一か、はよ。ん?お前今、空瑠って呼ばなかったか?」
「?あぁ」
「なるほどな」
「?」
『・・・書類整理あるからそろそろ行くわ』
私が取り乱した理由の検討がついたレイネスにあれこれ言われる前に私は書庫に向かった。