翡翠とアメジスト2
□揺れる警視庁1200万人の人質
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『んで?結局全て偽物だったと?』
コナンから電話が来たのは明け方だった。
「あぁ・・てっきり電車だと思ったんだがな・・・」
空瑠もずっと考えていた暗号の一節が頭に浮かび
『赤い・・登る・・・鉄の箱・・か・・・』
声に出して考えていた空瑠の呟きが電話越しにコナンにも聞こえたらしく
「空瑠?」
コナンが呼びかけるがそれを全く気にしていなかった。
『そのまんま考えてみたらどうだ?』
一つの仮説を思いついた空瑠はコナンの言葉を無視して話を進めた。
「そのまま?」
『赤いは赤い色、鉄の箱はそのまま、登るは上に上るもの・・そう考えるとひとつしかなくないか?』
「!東都タワーか!」
『まぁ、可能性の一つだが・・・』
そうは言いながらもおそらく空瑠の中では確信のある回答となっている。
「サンキュ!そういや空瑠は全国模試だったな・・」
『そうだな・・とにかく、可能性ってだけで断定はできないとだけ言っておくぞ』
「あぁ。俺も考えてみる。サンキュ!」
『はいよ』
電話を切った空瑠だが、着替えた格好は帝丹の制服ではなくズボンにシャツというラフな格好。
『さて、行きますか』
バイクのキーと携帯と財布を持つとヘルメット片手に工藤邸を出た。
工藤邸からバイクで飛ばしてもそれなりに距離がある東都タワーに向けて。
『とりあえず・・・エレベーターだとすると・・展望台か?』
東都タワーについた空瑠は見上げながら爆弾の有りそうな場所に検討を付けそのまま中に入っていった。
『意外に混んでるな』
人で賑わう展望台を見渡しながら何ともなしに呟く。
辺りに視線を向ければエレベーターのボタンを必死に押そうとするが若干身長が足りないのか押せずに頑張っている少女がいた。
その腕には巨大なくまのぬいぐるみを抱きながら。
『くすっ』
あの頃の年頃の子は押せないものを必死に押そうとするからか空瑠は笑みを浮かべながらその子の元に足を進めた。
’ひょいっ’
後ろから脇の下に手をいれ持ち上げた。
『これでボタンに手が届くかい?お嬢ちゃん』
急に目線の変わった世界に少女はきょとんとしていたが空瑠の声に反応し慌ててボタンを押すとそのまま後ろを振り返った。
「お姉ちゃんありがとう!」
笑って礼を述べる少女を下ろしなんとなく不安だからと空瑠も一緒にエレベーターに乗った。
『お嬢ちゃん一人で来たの?』
エレベーターに乗りながら空瑠が話しかければ少女はニッコリと笑い
「あのね!私が上から見たいって言ったからねママが行ってきてもいいよって。でもねちゃんと戻ってきてねってママが言うから戻ってきたの!」
少女の答えに呆れながらも
『そっか。なら、お姉ちゃんとママのところまで行こうか?今は人も多いからね』
「うん!」
エレベーターに乗りながら持っていたぬいぐるみのことや少女自身の事を聞けば
刑事としての勘か、暗殺者としての経験か
『(何か・・あるな)』
天井に視線を向け目を細めた空瑠に
「お姉ちゃん?」
下から不思議そうに尋ねる少女基朱美ちゃんの声とともに急にエレベーター内が揺れと共に大きな音が響いた。
『っ!?』
急な衝撃に空瑠は咄嗟に朱美を抱き抱えると衝撃を与えないように自身で包み込んだ。
『怪我はないかな?』
今にも泣きそうな朱美に優しく尋ねその背中を撫でた。
「大丈夫・・」
その言葉にホッと胸をなでおろした空瑠は非常用ボタンを押して指示を頼めば既に救助を呼んでいるらしくそのまま待機となった。
『大丈夫だ。今救助に向かっている。朱美ちゃんのママも外で待ってるからな。それまで頑張ろうな?』
空瑠の優しい声音と背中をさする手に朱美は頷くと笑顔を見せた。