蒼と翡翠の想い
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そして生まれたのが息子である新一だった。そこから夫婦は子育てに追われながらも空瑠のことを気に掛けてはいたが・・・
『眠れないや』
夜泣きだけでなく小さな物音にも敏感に反応してしまう空瑠は再び不眠症に悩まされる日々を送っていた。
「ほら、空瑠ちゃん」
そう言って有希子から渡された赤子の新一を受け取ったが
『可愛いけど・・ごめん、支えてられないや』
そう言ってすぐに有希子に渡した空瑠は息を吐きながら椅子に座った。
「やっぱり眠れない?」
『こればっかりは仕方ないと思ってるよ』
12歳の言う事なのかと甚だ疑問ではあるが空瑠は元から悪くない頭脳をさらに伸ばし自分の興味を持ったことには手を付けるが途中で投げ出すことはせず主に武道は全般出来るようになっていた。
「姉ちゃん」
喋れるようになった新一は事あるごとに空瑠の側にいるため空瑠もだんだんとその無垢な笑顔に癒されるようになっていた。
そしてこの頃から既にシスコン気味になっている新一に夫婦は苦笑しながらも温かく見守っていた。
空瑠はその後中学、高校、大学へと進学しその頭脳はさらに伸ばしていた。
そして就職に選んだのは
『父さん。私、警察になろうと思うの』
警察学校への手続き書を持った空瑠は書斎で仕事をしていた優作のもとを訪れた。
「やりたいと思ったこと空瑠はやってみなさい。だが、気をつけるんだよ。はまだ完全に治っていないんだからね」
そう、あれから対人恐怖症、人間恐怖症、暗所恐怖症は克服できたものの未だ不眠症は治らず眠りが浅い日々も、眠れない日々もある。
昔のように倒れることは減ったがそれでもひどい時は不眠による過労や栄養失調になることがある。
勿論、警察に入ればそんなことは言ってられなくなるが・・
『それは承知の上。それでも、私はこの職だけは変える気はない』
強い瞳で言われ優作は折れざるを得ず
「これから上司となる目暮警部には私から言伝をしておこう。勿論、空瑠の意思は尊重して欲しいと言う事もね」
『まだ警察学校に入るって決めただけだよ。父さんがそれを伝えるのは無事、警察官になってからにしてほしいな』
優作の言葉に苦笑する空瑠だが、優作は
「空瑠なら、確実になれるだろう。私たちの、そして彼らの娘なんだからね」
優作からの言葉に空瑠は頷き警察学校への進学を決めた。
その言葉と頭を撫でられる手はいつでも優しく空瑠の背中を何度も押してくれていた。
「あ、勿論治療は続けなければならないから医者には通うんだぞ?」
『わかってるけど・・こればっかりは仕方ないか』
自分のことだが空瑠は溜息を吐いていた。