蒼と翡翠の想い
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先程の男性が空瑠とマリの間に入ってきた。
{「彼女は私のところで勉強している学生よ。ホームステイしながらね」}
マリの言葉に男性はふむと顎に手を置き何かを思案するように空瑠とマリを交互に見た。
{「彼女はこの後事情聴取があるんだが・・」}
{「それは聞いてるから大丈夫よ」}
{「そうか」}
マリは肩を竦めるが空瑠に一瞬視線を向けるとウインクした。
{「大丈夫そうなら本部に移動したいんだが構わないか?」}
{「私は平気。空瑠、帰り待ってるね」}
{『荷物ごめん、買ったもの全部落とした』}
{「はいはい。わかったわ」}
マリは後ろ手に手を振ると野次馬の中へと姿を消した。
「シュウ、他の人質も怪我はないし大分落ち着けたみたいだから本部に移送するわ。貴方も車に乗ってくれる?」
『あ、はい』
「いや、彼女は俺の車に乗せる。ジョディは先に本部に行って聴取を始めてくれ」
「えっ?えぇ・・わかったわ」
何か言いたげにしながらも了承し車に乗った彼女を見送り
「俺たちも行こう」
そう言ってまた肩を抱かれながら
「乗ってくれ」
誘導された場所に停まっているシボレー。
空瑠が乗るのをエスコートするように助手席側のドアを開け乗ったことを確認すると自身も運転席に回り乗り込んだ。
「本当ならば他の人質たちと一緒に移送するべきなんだろうが・・すまない」
『いえ、お気になさらず』
空瑠は手を体の前で振りながら困ったように苦笑した。
「待て」
赤井はふと視界に入った空瑠の手が気になり手首ごと掴むと自分の目の前に持ち上げた。
「さっきは切り傷だけかと思ったが・・」
不審なくらい腫れている左中指と薬指に赤井は眉を寄せた。
「痛みはどうだ?」
『いえ、そんな痛みは感じませんので』
空瑠も指先に視線を向けたが別段痛みは感じていなかった。
「先に病院に行くが構わないか?」
『なんだかすみません』
言いながら車を出す赤井に空瑠は頭を下げた。
「そういえば名乗っていなかったな。連邦捜査局、FBIの方がわかりやすいか。捜査員の赤井秀一だ」
『白夜空瑠と言います。今回は助けていただきありがとうございます』
空瑠は赤井に向かってお辞儀をしたが
「いや、俺は仕事だからな」
赤井は畏まるなと制した。
病院に付けば直様診察室へと連れて行かれ
{「ヒビですね。中指に薬指、小指もですか・・それに至る所に切り傷」}
医者は空瑠の両手を見るなり渋い顔をしたがレントゲンの写真を見てさらに顔を顰め
{「それと、その左手は一体?」}
さすが医者だと空瑠は感心するが全てを晒すことはせずマリの名前を出せば何故か納得されそれ以上の詮索はされず診療は終了。
両手は見事に包帯が巻かれ
『大袈裟すぎる・・』
苦笑しながら空瑠が会計待ちをしていれば
「そんなに酷かったのか?」
空瑠を診察室に入れてから姿が見えなくなった赤井が横に立ちその手を見つめた。
『いえ・・骨折もヒビだったのですが・・・』
気が付けばこうなっていたと空瑠は苦笑しながら赤井の前に両手を掲げた。
「全く。お転婆なお嬢さんだ」
苦笑しながら赤井は空瑠の頭を撫でた。