蒼と翡翠の想い
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『今やってるGolden Appleですよ。今この辺り例の通り魔が出るじゃないですか』
それが心配だと言う空瑠に赤井は一瞬眼を細め
「確かに心配だな」
視線を逸らしながら言うが空瑠はそんな赤井の様子を見ていたのだった。
「済まないがもう行くぞ。その例の通り魔を追わなきゃならんからな」
そう言ってカウンターに代金を置いていく赤井に空瑠は何も言わずただ、その背中を見送ったのだった。
『例の通り魔をFBIが・・ねぇ』
置かれている代金を回収しカップを片付けながら空瑠は刑事の顔つきをしていた。
そしてその夜
‘プルルル’
『はい。空瑠って、母さんどうしたの?今日はミュージカル見に行ってったんでしょ?』
「そうなんだけど・・事件が起きてね」
『事件?解決したの?』
「もっちろん!このナイトバロニスが解決したわよ!」
嬉々として話す有希子に
『新一の助言か・・もしくは聞いたんでしょ?』
呆れながら言えば
「もー!空瑠ちゃん鋭すぎ!」
『で?何で電話してきたの?』
本題から逸れてしまい空瑠は修正するように尋ねれば
「そうそう、私これから事情聴取で警察に行かなきゃいけなくて・・一応新ちゃんたちにはタクシーで帰るように言うつもりなんだけど、空瑠ちゃん迎えに来れない?」
『別に良いけど・・新一たちまだ劇場にいるの?ここからだと30分以上掛かるけど』
「あ、そっか。空瑠ちゃん今マリの所にいるんだっけ」
『そう』
「でも、お願いしていい?通り魔のこともあるから」
『分かった』
空瑠はそう言って電話を切ると窓に視線を向ければ降り続く雨は弱まることはなく
『タオルの数枚は必要かな・・』
呟きながらタオルを用意し愛車のキーを片手に同居人に出かけることを言いに行った。
そして劇場に向かうが既に警察も撤収した後らしくその場に居た人たちに高校生くらいの男女を見なかったか尋ねれば既にタクシーで帰ったと言われる。
『何で勝手に帰るかな・・』
片手で頭を押さえながら空瑠は項垂れ劇場を後にした。
すると・・
『ん?新一?』
大通りを走っていれば店の軒下に蘭を抱えて佇む新一の姿があった。
『新一、乗って』
空瑠は店の前で車を止めるとサイドウィンドウを下げて声を掛けた。
「姉さん!?」
声を掛けてきた人物に新一は驚きの声を上げるが
『蘭ちゃんどうかしたの?』
空瑠は車を降りると助手席側のドアを開け新一と蘭を後部座席に乗せた。
「風邪をぶり返したみたいでな。熱があるんだ」
新一は蘭に膝枕する格好で空瑠の問いに答えた。
『ちょっと!だったら何ですぐにタクシー呼ばないの!』
助手席においていたタオルを渡しながら空瑠は怒ったように言えば新一は顔を逸らし
「捕まんなかったんだよ・・」