翡翠とアメジスト3
□危機呼ぶ赤い前兆
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‘バタンッ’
「・・?」
工藤邸のドアが閉まった音で書斎にいた沖矢は本から意識を現実に移し本を置くと玄関に向かった。
「お帰りなさい。空瑠。今日は早かった・・・?」
未だ玄関の前で俯いたままの空瑠に沖矢は首を傾げた。
「空瑠?」
『あ、ただいま』
沖矢の声に漸く顔を上げた空瑠は思い出したように挨拶を返すと
『ちょっと調べたいことあるから部屋に居るね』
そう言って空瑠は沖矢の横を通ろうとしたが
‘ガシッ’
しっかりと沖矢に腕を掴まれ
「ちょっと来てください」
そう言ってリビングに連れて行かれた。
勿論、空瑠は抵抗するように腕を振りほどこうとするがそんなことで沖矢が離す訳もなく
‘ポスンッ’
そのままソファに座らされた空瑠に沖矢は両腕をソファにつき空瑠を囲み顔を近づけながら眉を寄せて見つめた。
目の前にいる沖矢に腕で囲われれば空瑠に逃げる術はなくただ目を逸らす事だけが唯一の抵抗だった。
「空瑠」
耳元で囁かれるその声に空瑠はピクリと肩を揺らし
「私として話を聞きますか?それとも・・」
‘ピッ’
と変声器を切る音と共に
「俺が話を聞くか?」
その声に空瑠は逸らしていた目を沖矢に戻した。
『・・・』
何かを発しようと口を開く空瑠だが、結局音になることはなくその口を閉ざした。
「全く・・」
沖矢は肩を竦めるとソファについていた手を離し
‘ビリッ’
布の破ける音と共にマスクは取られその翡翠の瞳が空瑠を捕らえた。
『狡いですね・・その瞳を向けられたら、私は瞳を逸らす方法を知らないんですから・・』
空瑠は不安定に揺れるアメジストで赤井を見上げた。
そして赤井は不安定に揺れる空瑠の瞳を見ると一瞬眉を寄せ隣に座った。
‘ヒョイッ’
まるで人形か何かのように空瑠の脇に腕を通すと
『ちょっ!』
驚く空瑠は無視してそのまま持ち上げると膝の上に対面するようにして座らせた。
「不思議に思うが食事を一緒にしながらこの軽さは何なんだ?」
本気でわからないと首を傾げる赤井に空瑠は答えを持っておらず俯いた。
「まぁ、冗談はさておき・・今日はwingsの招集だったんだろ?そこで何かあったのか?」
真っ直ぐに見つめてくる赤井に空瑠はどう言おうか考えたが
『話しますが・・少しだけこうさせてください・・』
そう言って赤井の首に腕を回すと赤井の胸に顔を埋めた。
「あぁ。話したい時に話せばいい」
ゆっくりと空瑠の背中を摩る赤井に空瑠は体を震わせながら涙を流した。