10万hit記念リクエスト小説

□後継者
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「やっぱ母さんを超えるのって無理なのかな」

龍一は膝を抱えて呟くように言った。

「まずはボウヤを超えることだな」

「ボウヤ?あぁ、新一兄ちゃんの事か。母さんと新一兄ちゃんだと母さんの方が上なの?」

『上っていうより、頭の回転とか思考力は私の方が早いかな』

空瑠はお皿にハムサンドを乗せ自分用に珈琲の入ったマグを持ってリビングにやって来た。

「ふーん。でも、一番は優作お祖父ちゃんなんでしょ?頂きます」

ハムサンドに手を付けながら龍一は首を傾げた。

『優作さんは本当に凄いからね』

「あぁ、優作氏には俺も及ばないからな」

絶賛する両親に龍一はまたふーんと答えるとハムサンドを平らげ

「ご馳走様でした」

挨拶だけはしっかりするように空瑠が教育したため身についている龍一だった。

そして思い出したように唇を尖らせ

「母さん、犯人分かってたんだって?」

『あぁ、秀一から聞いた?』

息子の態度が空瑠には新一がしていたのを思い出しクスリと笑みを零せばまた龍一は拗ねる様に声を出す。

「父さんから聞いた。母さん、今朝の新聞のダイイングメッセージで分かったって」

『まぁね。それなりに事件は解決してきたからさ』

苦笑する空瑠に隣に座っていた赤井がフォローする様に声を出した。

「龍一、空瑠が何年探偵を続けているか知っているか?」

「えっ?俺が生まれてからだから・・17年くらい?」

「いや、もっと前だ」

『私が17歳の時だから・・何だかんだもう20年近いのか』

自分の年齢と比較して空瑠は呟くように言うが

「はっ?母さん女子高生探偵だったの?真純姉ちゃんみたいに?」

「空瑠は真純と違って女子高生探偵ではなかったな」

『呼ばれ方がね』

「へぇ、母さんは何て呼ばれてたの?今ではプライベート・アイだよね?」

『女性名探偵って呼ばれてたね』

「あぁ、年齢を公表していなかったのが原因だったか?」

『そう。どうも見た目年齢は高校生には見えなかったらしいから』

空瑠は懐かしいなと呟くが

「・・俺が母さんに敵う日何か来ねぇじゃん!」

自分との経験の差を考えた龍一が叫び大きく息を吐いた。

「やれやれ・・」

『まぁ、そう思う気持ちもあるか。龍一には経験できる機会が少ないから』

しょげる息子を見た空瑠と赤井はそれぞれ顔を見合わせ苦笑いを零すと

「龍一」

「ん?」

赤井は足を組み直し真っ直ぐに息子を見た。

「将来の事を考えた事あるか?」

「将来?大学行くとかそう言う事?」

「あぁ」

赤井の言葉に首を傾げる龍一だが

「あんまり・・俺は探偵としていられたらいいなとは思うけど、まだまだ経験も知識も浅いから」

首を横に振って否定した。

『それが分かってるなら秀一も提案したら?』

空瑠は龍一の言葉に微笑みながら隣に視線を移した。

「提案?」

膝を抱えながら座っていた龍一も空瑠の言葉に姿勢を正した。
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