翡翠とアメジスト
□6年後
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一度シートにもたれ深呼吸するとエンジンをかけまずはサーキットコースまで軽く慣らし
『(なるほど・・癖自体はそんなにない。流石だな)』
ニヤリと笑みを浮かべた空瑠の雰囲気が変わったことに有希子は隣で感じ
「空瑠ちゃん?・・・!?」
声を掛けるが急激に加速した車に有希子は舌を噛みそうになり慌てて掴まった。
『喋らない方がいいですよ?この先のコーナードリフトで抜けますから』
宣言したとおりコーナーに差し掛かるとドリフトで抜けていきその速度は落とすことなくイン側ギリギリまで寄せていった。
『(こんなものか)』
視線を横に流しながら空瑠はハンドルを僅かに動かすようにして調節しコーナーを抜けていけばさらにアクセルを踏み込んだ。
一周する頃には有希子の持つ記録と変わらないくらいのタイムが出ていて新一達が待つ場所に戻った。
「んもーー!凄いしか出てこないわ!」
有希子は車から降りるなりキラキラとした眼差しを空瑠に向けた。
「そんなに空瑠のドラテクは凄いのかい?有希子」
「えぇ。私と大差ないわ」
運転席から降りてきた空瑠はなんてことない顔をして会話を聞いていた。
「さて新一、この会話を聞いて燃えないわけにはいかないだろう?」
ニヤリと笑った優作に新一も頷き運転席に座った。
「流石、刹那と瑠維さんの娘って感じね」
去っていった車を見ていた空瑠に有希子が話しかけ空瑠も振り向いた。
「刹那は私と同じくらい運転ができたのよ」
『情報線のプロではなくてですか?』
「それもあるけど、あんまり運転する機会もなかったからかしらね」
有希子の言葉に空瑠は両親のことをまた少し知れた気がした。
工藤夫妻から聞いた話と預かっていたUSBでwingsの事を知りその右腕をしている羅瑠という公安の人に一度会いたいと思っていた。
『両親のやろうとしたこと・・か・・』
フッと息をつき空を見上げた。
ふとジャガーのエンジン音が聞こえ戻ってきたジャガーに有希子と顔を見合わせ傍に寄った。
「どうだった?新ちゃんの運転は」
「まぁまぁだな。母さんには遠く及ばないというとこか」
「バーロー母さんなんかと張り合えるかよ」
「あら、空瑠ちゃんは張り合えると思うわよ?」
新一の言葉に直様有希子はツッコミをいれ新一は言葉に詰まった。
「まぁ、悪くはないからな。やればそれだけ伸びるだろ」
慰めるように優作は新一の方を叩いた。
『気に病まない方が良いんじゃない?』
肩を竦める空瑠に新一はジト目で空瑠を見た。
「オメー本当にハイスペック過ぎんだよ」
『まぁ、遺伝なんじゃない?』
両親のことを多くは語らない空瑠だが、新一も優作、有希子から軽く聞いたため何となくそれで納得してしまった。