FBIと護り屋
□出会い編1
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「そうか。君がナイフを躱したのを見てつい、君の動きを見たくなって傍観してしまったな。すまない」
『ダウト。口の端釣り上げて笑いながら謝られても説得力なし』
「すまない。こういう相手を久々に見たからな」
クツクツと笑う赤井にウィルは眉を寄せ怪訝な顔をする。
「君のような一般市民はなかなか見ない。俺は君を気に入ったようでね」『俺は気に入られたくないね』
「そう、つれない事を言わないで欲しいものだ」
『話がそれだけなら俺を解放してくれないか?さっさと学校行きたいんだが』
「代返はしてあるんだろう?」
ウィルの言葉を一蹴する男にウィルはこれ以上刺激をすれば職権乱用しかねないと感じ
『何がしたいわけ?』
最早敬語さえも使わなくなった。
「言っただろう?君を気に入ったと」
『だから、俺は気に入られたくない』
「ふむ、何か訳があるのか?」
真剣に聞いてくる赤井にウィルは項垂れた。
『あんたって頭良いのか何なのか分かんねぇ。俺は一般人、あんたは警察。俺は警察の人に気に入られるのはごめんだって言ってんの(第一、んな事になったら仕事がしづらい)』
「それは困ったな。俺はこの仕事を辞めるつもりはないが君を諦めるつもりもない」
『とにかく、解放してくれない?』
いい加減うんざりしてきたウィルに赤井は電話番号を教えろと言ってきたためウィルは口頭で番号とアドレスを呟き赤井は聴取に使用していた紙にそれを書き込んだ。
「時間を取らせてすまないな」
FBI本部を出た所まで送ってきた赤井にウィルは別にと返せば丁度道路に停まる1台の車。
「お疲れ」
代返を頼んだ相手。
ケンが片手を上げたのにウィルも片手をあげて返事をし
『じゃ、迎えが来たんで行きますね。FBI、赤井秀一捜査官さん』
「俺は君に名乗っていないはずだが?」
目を見開き驚く赤井に
『人の口に戸は立てられぬってね。あんたが話していた人、赤井さんと呼んで敬語を使っていたのは部下。秀一と呼んでため口で話していたのが同僚。
シュウと呼んでいたのが彼女かな。そして部下が着ていたジャケットにはFBIの文字。これだけの材料があれば名前の特定は容易い』
ニヤリと笑いウィルはケンの元に向かえば示されるのは運転席。
『俺が運転か』
「お前の車だろうが」
『了解』
乗り込んだウィルにケンも助手席に座れば滑らかに走り出す車。
「ウィル、良いのか?あの男、こっち見てるぜ?」
『あぁ、わかってる』
後ろを振り返るケンとバックミラーを見るウィルに映るのは未だその場を動かずじっと車が消えるのを見続ける赤井。
『厄介な奴に目を付けられたもんだ』
舌打ち混じりに零れたウィルの本音。
「そーいや、例の情報どうだった?」
『俺の手でやれる限りやったが出なかったからな。プロに頼んだ』
「あぁ、情報屋か」
赤井の姿が見えなくなりケンは漸く前を向くと話を切り出した。
「ウィルがやって出てこないってことはやっぱ組織?」
『だろうな。情報が出てくればそのまま流すさ』
「俺たちは“護り屋”だからな」
そう。
護り屋はあくまで護衛や警備。
狙ってきた相手をどうこうするのは役目ではない。
そのためそれが分かれば後は警察関係にその情報を流すだけ。
『本当に厄介な相手だな』
もう一度呟くウィルにケンは横目で表情を盗み見る。
「(何言われたんだろうな・・まぁ、大方の予想はつくがな)」
表情を歪めるウィルにケンは内心でご愁傷様と呟きウィルは自分たちのアジトに向け車を走らせた。