FBIと護り屋

□仕事編1
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『悪い遅くなった』

アジトであるバーにウィルが着いた時

「どうした?」

ケンはウィルの纏う空気が違う事に直ぐに気が付いた。

『いや・・ちょっとな』

それ以上は言わずスチールに腰かけたウィルは片手で顔を覆うと深く深く息を吐いた。

「珍しいな。お前が客を引き連れて来るとは」

『客?』

マスターは苦笑しながらウィルに問いかけるが言われたウィルは訳が分からずマスターが指差した入り口を振り返れば・・・

『嘘だろ・・』

撒いたはずの赤井が居た。

「いい店だな」

店内を見渡しながら赤井はウィルの隣に腰かけるが

「あーぁ。やっちまったな」

ケンはご愁傷様と内心で呟くが

「ふむ。ケン、今日組んでる相手を変えても大丈夫か?」

「俺は平気っすけど、何でまた?」

「今のこいつが平常に出来るとは思えなくてね」

マスターは表向きこのアジトのバーのマスターだが裏では護り屋の頭。

指示を出すのもマスターの仕事。

そしてマスターはウィルを指差しながら言えばケンは苦笑しながら了承した。

「マジで珍しいな。こんなミス」

音で必ず気が付くはずのウィルがここまで相手を引き連れて来る事は過去になかった。

初めてのケース。

『マジで何やってんだろ・・ここに来るまで全く気が付かなかった』

その言葉には語弊があった。

気が付かなかったのではなく気が付く余裕がなかった。

勿論、マスターもケンもその事には気が付いているため何も言わない。

「ケン、準備に入れ」

時計を見てマスターはケンに声を掛けると

「ジェイ」

奥に向かって名前を呼ぶと

「何すか?」

寝ていたのか目を擦りながら出てきた人物、同じ護り屋のジェイ。

「あれ?依頼人・・・じゃぁ、なさそうだな。誰?」

赤井の存在に瞬きしながら首を傾げるジェイにウィルは項垂れケンは苦笑した。

「ジェイ、悪いがピンチヒッター。ケンと組んでくれ」

「うぃーす。ケン、後で話し聞かせろ」

「了解っす」

「お前は元からのでいい。なーんとなく分かったからな。時間と場所は?」

「19時にステイリヤホテルです」

「用意出来たら俺んとこ来い」

「了解っす」

そう言って奥に引っ込んだジェイに返事をしてケンも立ち上がり奥に引っ込んで行った。

「さて、君もお仲間に連絡は入れておいた方が良いだろう。我々の事を話すのにこの場所をFBIに知られる訳にはいかないものでね」

「ほー?俺がFBIだと彼から聞いたのか?」

「私を侮らんでくれ。君のような有名人は私の耳にも入る。裏の世界からね」

マスターの言う意味はシルバーブレッドの異名。

赤井もマスターの視線と口調、威圧的な雰囲気に察したのか携帯を片手に1度店を出て行った。

『マスターサンキュー』

ウィルはぐったりと項垂れながらカウンターに伏せた。
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