本 棚
□なんちゃってシェアハウス
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事の発端は先週の金曜日だった。
「最近BEST会やってないね」
雑誌の撮影でみんなが集まっている楽屋で、伊野尾くんがふとそんな事を言った。
「久々、集まりたいよね」
「なに、伊野尾ちゃんが誘うなんて珍しいじゃん」
「いやいや光さん、俺だって心の中でいつも会いたいって思ってるんだから」
「嘘だ〜前に俺がJUMPとずっと一緒にいたいくらい好きっつったら嫌だ言ったじゃんか〜!」
「薮、それ思ってるのお前だけだから」
ちょっと光くんってデリカシーないいい方するよなって思ったけど薮くんがにこにこしてるからなんかまぁ、いいかな、なんて笑う。
「じゃあ今日集まっちゃおうよ」
「大ちゃん、それ急だろ!」
「光くんがさっき今日は仕事ないって言ってたから!」
「でもみんなは、」
「俺空いてるよ」
いかにも待ってましたと言わんばかりに伊野尾くんがすぐさま答える。
「俺も!」
あれーみんな予定ないんだ。
俺も…
「…俺もだよ」
「えっ!まじで!!」
伊野尾くん嬉しそう。
「すごいね、急なのにみんな空いてるって」
そう俺が言うと、
「ねぇー!こんなすぐ予定合うなんて俺らニートかなんかだよ!!」
と、光くん。
「ははっ、無職!!」
「無職〜!!」
光くんと有岡くんが楽しそうでなにより(笑)
伊野尾くんからメンバーを誘うなんてなかなかない事だから、ちょっと嬉しいなぁ。
話し合った結果俺の家に集まることになった。掃除したばっかだから、今日は家綺麗なんだよね、ツイてる。
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ピンポーン
ちょっと早く来すぎたかなーなんて思いながら木の家のインターホンを押す。BEST会の場所はカラオケが多かったから、今日は折角だし、みんなの夕飯を作ってきた。
ガチャリと音がしてドアが開いて木が顔を覗かせた。
「光くんはやいね。どうぞ、」
「思ったより早く着いちゃった。お邪魔しま〜す」
木の後ろをついて行く。
「まぁでも光くんらしいなぁ。最初に来るのは光くんかなって思ってた。」
「ふふ、なにそれ。予想してんの?」
「うん、なんとなくね」
木に言われた通りの場所に座り、鞄からタッパーを取り出す。
「並べていい?」
「わ、光くん作ってきてくれたんだ!」
タッパーの蓋を開けてテーブルの上に並べた。おつまみみたいにいろんなもの少量ずつ作ってみた。
「めっちゃ美味そう」
俺の作った料理をキラキラな瞳で見つめている姿に思わず微笑んじゃう。
「木、取り皿ある?」
「あ、おっけ!」
木がキッチンに行ったところで、ぐるりと周りを見渡してみる。
久々だなぁ。もう幾分か前に行った時以来だ。大人っぽい雰囲気になったかも。
「はい、これでいいよね」
「ん、ありがとう。」
木が戻ってきた。
「そういえばさっきの予想だけと、あんなに行きたがってた伊野尾くんに限って一番遅かったりするかな、って思ってる。」
「あぁ、わかる!」
確かに伊野尾ちゃんは気分がコロコロかわるからよくわからないし。
ピンポーン
本日2回目のチャイムです。
木が急いで玄関に向かう。
「いらっしゃ〜い」
「あ、お邪魔します」
「お邪魔しまーーす!!」
薮と大ちゃんか。
やっぱり伊野尾ちゃんは最後なんだ笑
「あ、光だ」
「うん、早く来すぎた」
「え、まさかこの料理光が作った?」
テーブルの上に並べられたものをみながら薮が言う。
いつも料理好きって言ってるけどメンバーに手料理振る舞うことあったっけ?、こんなにしっかりしたの振る舞うのは初めてかな。
照れくさくて下を向きながらも頷いた。
「うっわ、すご!光くんの手料理!」
「たまたま時間あったから……簡単なものだけどね!」
褒めてくれるの、嬉しいけど恥ずかしいな。
嬉しいなんて
言わないけど笑